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「……縁談、まとまらなさそうだな」
色々聞いて欲しいことがあったためか、もう半刻近く二人で話し込んでしまった。城島が淹れてくれたコーヒーは冷めていて、酸味が強くなっていた。
盛り上がりを少し超えたところで、城島が至って軽めにそう口にしたので、七生は申し訳ない気持ちになる。
「すみません。俺も父には、取り合って貰えてないんです。何度か話をしてるんですけど……聞いてくれる気配がなくて」
やっぱりなぁ、と城島は片手で頭を掻いている。うちの親父もなんだよ、と眉を下げて笑うと、冷めたコーヒーを一口、二口と飲んだ。
そんな城島を見ていた七生は、キリキリと胸の辺りが痛んでいた。これがどこから来ていて、何が原因なのかは分からないけれど、カップに残ったコーヒーを飲んで紛らわせる。
「……あの、」
「ん?」
向かいに座る城島の顔色を伺うように、七生は声を掛けた。
「縁談はその、断って頂いて構わないんですけど……なんで俺に、こんなふうに優しくしてくれるんですか?」
そこまで聞いて、七生はしまった、と思った。答えにくいかな、と眉を顰めたけれど、何となく気になっていたのは本音で、パーティーで助けてもらった時から、何故そんなに優しくして貰えるのか疑問だったのだ。
面会のときは人が違ったみたいに怒っていたけれど、父親がいないところでは、城島は七生のことを受け入れて優しく接してくれる。
———まるで、家族のように。
「今だって、俺の話すごく聞いてくれるし。城島さんの話も、すごくしてくれて……俺、相手で、しかもオメガなのに」
七生の言葉に、城島は目を瞠った。
あー、と城島は暫くした沈黙を埋めるように漏らすと、「昔からさぁ」と照れくさそうに言った。
「……オメガだからとか、アルファだからとか、そういう見方にはうんざりしてんだよ」
それに、と城島は続ける。
「八神はなんか、ほっとけねえから、かな。ほっといたらその辺でくたばりそうな、危なっかしい感じがするっつーか……」
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