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「……え」
七生は、城島の頬にそっと唇を寄せた。
海外ではよくある挨拶代わりのキス。けれどこれは、七生の中では挨拶などではない。
あなたが好き———とても、声に出せるものではなかった。オメガの自分が、アルファの家系に唯一生まれた自分が、こんなふうに人を求めるなんて、してはいけない。
この縁談もダメになる。そう思うと、衝動的に身体が動いていた。
呆然とした城島をよそに、赤く染まった顔を伏せたまま、部屋を出ようと扉の方へ走る。
「……すみません、俺、今日はこれで」
「おい、八神」
答えを聞かず、そのまま自室へ戻ろうとドアノブへ手をかけた時、腹の底からじわじわと熱が上ってくる感覚になった。
けれど、前に感じたものとは違う———これはもっと、速度を増して全身を駆け巡っていく熱だ。
(なんで……? まだ早い……薬だって飲んでるのに……!)
「……っ!」
壁に寄りかかり、ずるずるとその場にうずくまるけれど、身体の熱が治まりそうになかった。
ぶわりと、自分の匂いが放たれているのが分かる。薬も、特効薬の注射も自室に置いているため、今出来ることは何もない。
「はぁ、はぁ……っ、はぁ」
(やばい。早く出ないと)
呼吸が荒くなっていく。
身体が熱い。
抑え込んでいたものが一気に押し寄せてきたようで、身体はどんどん熱を持つ。
自分の匂いを、遠くへ遠くへと放っている———アルファを引き寄せるために。
「八神」
そう、名前を呼んだのは城島だった。
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