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一
消毒液の匂いがする。
規則的な機械音と、少し澄んでいる空気。
七生が自分が今いる場所が病院だと分かったのは、目を開けてしばらくしてからだった。しんとした病室には自分以外に誰もおらず、静かに起き上がってみると、病衣に着替えさせられていた腕の辺りから、点滴の他に見たことのある液体が身体に入れられている。
春の空気はもう暖かく、少し開けてあった窓から入る風がとても心地良かった。
七生はどうやら、二日ほど眠ってしまったらしい。暫くすると部屋付の使用人が一人入ってきて、慌てて医者を呼びに走って行った。
「薬を飲んでいたのに発情してしまったのは、ホルモンの異常からだろうね」と、日本での七生の担当医は診察時、不思議そうに顎を掻いていた。以前の同様の症状が周期的なもので、今回のものは所謂“突発的”な発情だった。
それを薬で防げなかったとなると、懸念されるのは日常生活で、担当医は「うーん」と唸り、言いにくそうに口籠っている。
「……あの、先生?」
「あぁ。君は日本で縁談の話があったんだったね。上手くいきそうかい?」
その問いかけに、七生は眉を下げて気まずそうに言う。
「いえ、お相手からは断られていて……父に話しても取り合ってもらえないので、なんとも」
七生の返答に、医者は口を開けたまま僅かに目を瞠った。
「……そうなの。実は、こういうオメガのホルモンの異常に一番効くのは、番(つがい)との性行為だったりするんだけど、それは……難しいのか」
七生はそれ以上、自分から口を開くことが出来なかった。
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