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アルファとオメガの間にだけ存在する“番(つがい)”の関係性は、発情しているオメガの頸に、アルファが噛み跡を残すことで成立する。一度番となってしまうと、パートナーとの結びつきはとても濃いものになり、相手と死別する他、番をやめることは出来ないのだという。
七生は元々、父親の思惑で日本の財閥のアルファに嫁がされて、そこで相手と番となって後継を産むことになっていた。
けれどそれは、七生の父親と相手の父親が、自分たちの利益のために決めていたものであり、七生の相手の城島はそれを断っていたのだ。
「この数日は、ホルモンのバランスを見ながら点滴とホルモン剤を調節していこう。あと、退院してからもしばらくは注射器の調整剤を打ってもらうことになるから」
そう言って、医者は七生の額に軽く拳を当てる。「落ち込むな」と励まされているようで、七生は素直に嬉しかった。
けれど七生は、既に城島のことを好きになってしまっている。この気持ちをこれからどうすればいいのか、もやもやとした心をどう言えばいいのかも分かっていない。
医者が病室から出て行ったのと入れ替わりに、長く部屋付をやっている使用人が花束を持ってやってきた。彼女は七生の血色の良い顔色を見て、心底安心したようだ。
「……思っていたより早くお目覚めになられて、ほっとしました」
「ごめんなさい。色々と心配かけてしまって」
七生が肩を竦めると、使用人は「あら」と目を丸くする。彼女は「大丈夫ですよ」と七生に笑いかけた。
使用人の名前はシャーロットといって、彼女は七生が十二歳の時にやってきた使用人だ。ベータのシャーロットは主に七生の部屋付きで、今までで一番付き合いのある使用人であり、七生が発情の初潮を迎えた頃も、今と同じくずっとそばにいてくれていた。
「体調の方は大丈夫そうですね」
「うん。あとは薬でホルモン調節させるって、お医者さんが言ってました」
そう七生が言うと、シャーロットは優しく笑って、病室にあった花瓶に持っていた花束を生けようと言った。
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