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「七生様、こちらのお花はどうされますか?」
「……ああ、これは」
ベッドの脇に置かれた花瓶にシャーロットが生けてくれた花、それは城島からのお見舞いの花束だった。七生はその花たちの中で、黄色い活き活きとした花を一輪抜き取ってみる。
「シャーロット、これ、押し花か何かに加工出来ないですか」
「それなら、プリザーブドフラワーにしてみては如何ですか? ずっと褪せないわけではありませんけれど、生花のままよりはお勧めかと」
「じゃあそうしようかな」と七生が笑って言うと、この花たち全てにしましょう、とシャーロットは張り切ったように他の使用人へそのことを伝えた。
イギリスへ戻っても、たとえ、他のアルファのところへ嫁いでしまっても、七生はこの花を自分の目に留まるところへ置いておきたいと思った。
———きっと、全部は忘れられないだろうから。
初めて、こんなオメガの自分に優しく接してくれたアルファのことを、全て完全には忘れることは出来ない。
心の中で「ありがとう」と呟くと、七生はシャーロットとその他使用人と共に、空港までの送迎車に乗るため、一階のフロントへ向かう。
病室を出て、エレベーターへ乗ろうと使用人がボタンを押したとき、シャーロットが駆け寄ってきた何かに気付く。
目を丸くしてその方を見ているシャーロットを見て、七生は彼女の視線の先にいるものを見た。
「……え」
それは思い掛けない人物で、七生は目を瞠った。
額には汗が滲んでいて、春物のチェスターコートを着たその男の黒髪は、ボサボサに暴れている。
七生はすぐに、その男が誰なのか分かった。
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