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「き、城島さん……」
息を切らしている城島は、どうやらここまで走ってやってきたようだ。目を逸らそうにも、城島の姿に釘付けになってしまった七生は、それが出来ない。
「お見送りですか?」とシャーロットが聞くと、城島は息を整えつつも首を横に振った。
「……こいつ、少し借りていいか」
そう言うと、城島は七生の腕を掴んだ。「え、何を」と七生は軽く振り払おうとしたけれど、シャーロットは何かを察したのか、「手短にお願いしますね!」と七生の背中を押す。
その勢いに乗せられて、七生は城島に引っ張られていった。
「城島さん! あの、」
声を掛けても、城島からの返事はない。ただ握られた手にはぎゅっと力が込もっていて温かくなっている。
先程七生がいた病室へ入ると、城島はドアを閉めた。
しん、と静まり返る部屋には、肩で息をしている城島と、彼を見つめる七生だけだ。
頭ひとつ分違う身長で、身体つきの良い、見て分かるアルファの容貌。黒髪から覗いた青色の瞳に見つめられると、七生はそれに釘付けになってしまう。
(なんで……城島さんがここにいるの? なんで俺のこと、こんなふうに……)
どうして、と七生は目で訴えるように城島を見た。だが彼は七生から視線を逸らして、ずっと黙ったままでいる。病室にある壁掛け時計の秒針の音だけが聞こえる中で、城島は七生の手を離そうとしなかった。
「……悪かったな」
「え?」
聞こえるか聞こえないかの声で、城島は呟いた。
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