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「……城島さん、俺っ……」
身体を離して、城島を見上げると、彼は眉を下げて笑っている。
気付くと、七生は涙がぼろぼろ溢れていた。どうしようもなくこの人のことが好きなのだと、七生は改めて感じる。
今すぐ、気持ちを伝えたい。今伝えなければ、次はいつになるのかさえ分からない、と、思い切って声に出した。
“あなたが好きです”
けれど、七生の言葉は誰かがドアを開ける音にかき消されて、二人は思わずびくりと肩を震わせた。
『七生、こんなところにいたのか』
「父さん……」
それは、自分の父親だった。
銀色のスーツに身を包んでいる父親は、七生の横に座っていた城島に気付くと、あからさまに驚いた顔になる。
『なんで城島の当主がここにいる? 七生との縁談は無くなったはずだが』
英語でそう話す父親に、七生は少し気圧されていた。父親は、冷たい目で言い放ったあと『帰るぞ』とぶっきらぼうに続けた。
『お見送りに、来て下さったみたいで。もう出ますから』
七生は英語で言い、そそくさと立ち上がると、まるで隠すように握っていた城島の手を離そうとした。自分から断りを入れたこの縁談に、未練があるとは思われたくなかったのだ。
けれど城島は、そんな七生の手を取って自身も立ち上がると、七生の父親へ向けて頭を下げた。
『……大事な息子さんのところへ押し掛けてしまってすみません。ですが、お話があります』
流暢で発音の良い英語で、城島はそう言った。
真剣な城島の表情に、七生の心臓はどきん、と鳴る。城島の意外すぎる行動に、とても驚いてしまったのだ。
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