アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
11
-
「……日本語で良い。手短に話してくれ」
城島より少し背の高い七生の父親は、見下すように城島を見ていた。その表情に七生は完全にびくびくしていたけれど、城島の声に怯えた様子はなく、ただ真摯に父親を見つめていた。
「単刀直入に言います。七生さんとの婚姻を許可してください」
———なんの話だ、と七生は一瞬固まる。言葉の意味を理解すると、驚きでどうにかなりそうだった。何を言い出すんだと「城島さん!?」と声が出たけれど、七生の言葉に城島は反応せず、父親が何を言うのかと待っているようだ。
「……そちらも反対していたのではないのか? 父親の敷いたレールの上で生きるのは嫌だと。当主も下りると私は聞いているが」
七生は呆然と、城島と父親を見つめている。
「その予定でいました。俺は、親が敷いたレールに大人しく従うほど従順には出来てません」
……でも、と城島はしっかりとした言葉で続けた。
「七生さんの境遇を聞いて、俺はこいつを守りたいと思った。そばにいて欲しいと思った。“俺の気持ち”で、そう思ったんです」
「城島さん……」
はっ、と父親は鼻で笑ったけれど、後ろに控えていた執事に何か英語で伝えたあとに「好きにしろ」と吐き捨てるように言った。
「会社の経営が安定して、“オメガ”が家から出せるのなら好都合だ。そちらの親には私から連絡を入れておこう」
“オメガが家から出せる”———その言葉に、七生の心はずきりと痛んだ。やはり、父親にとって自分は息子ではなく、“オメガ”でしかなかったのだ。
そんな事実に呆然としたけれど、ぎゅっと強く握られた手に「大丈夫だ」と言われているような気がした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
48 / 178