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「けれど、番(つがい)にはなっていないのですね。城島様ならすぐにと思っておりましたのに」
七生の首元に目をやると、シャーロットは眉を下げた。
「城島さんはまだ色々と忙しいから。俺と番になることは先のことなんじゃないかな」
(俺は、隣にいられるだけで良いから……)
七生の方から“番になりたい”と言うことはないだろう。城島のそばにいられるだけで幸せなのだ。それに、何かわがままを言って嫌われてしまっては、自分は本当に必要無くなってしまいそうで怖かった。
気遣ってくれてありがとう、と七生が言うと、シャーロットは空いたカップにコーヒーを注いでくれる。
「私は、七生様が幸せなのでしたらそれで良いのです。お辛いことがあるのなら何なりと言ってください」
「ふふ、頼もしいですね」
七生が笑うと、シャーロットは胸を張りつつ得意げだった。
七生と四つ年の離れたシャーロットは、元々王族に仕える専門の家系出身である。
元々七生の母親の部屋付であったシャーロットは、十六歳の頃から使用人として雇われている。そして母親亡き後もずっと七生の面倒を見てくれていた。
「頼まれましたから」と始めは比較的無愛想で表情も少なかったけれど、七生は彼女とのコミュニケーションは欠かさず、いつからか、まるで姉弟のように言葉を交わすようになっていた。
他の兄弟とあまり接して来られなかった七生にとって、その存在はとても有難いものだったのだ。
昼食を食べ終わると、食器を載せたトレーをシャーロットが下げてくれた。
「……七生様の体調が宜しければ、これから少し敷地内を歩きませんか?」
「あ、良いね。最近部屋に籠りっぱなしだったし」
城島家に住むようになってから、七生は夫である城島の役割などを知るために、グループ会社が主に扱っている製品や社員の名前などを覚えようと、書類に目を通しながら勉強に励んでいた。
もう既に、四日は自室だけで過ごしていたのだ。
久しぶりに、城島家の敷地を散歩することにした。
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