アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
33
-
「自分ら、何やってんの?」
背後から、そう声を掛けられた。
聞き慣れない声に二人が振り向くと、見たことのない男が立っている。
紺色のジョガーパンツに黒の長袖を着ている男は、片手に脚立を抱えていた。すらりと伸びた脚は長く、背丈もほどほどにある。
「……あら、もしかして庭師の方ですか?」
「そう……ですけど。って、え、まさか本邸の人らすか?」
珍しげに、男は二人を見ては「ほー」と感心しているようだった。その額は汗で滲んでいて、暖かくなってきている時期に、肌を見せない作業着を着ている男の役職を当てることは容易に出来る。
そしてまた、相手も給仕服を着ている女性と主人らしき人物が並んでいるのを見て、どのような人間か察したらしい。
「本邸の人ら初めて会うたわ……いっつも執事みたいな人に適当に仕事押し付けられてるから」
男の口調に、七生は新鮮な気分になった。英語の訛りはイギリスでも少しあったけれど、この日本語の独特の訛りは、母親からたまに聞かされていた“ジャパニーズコメディアン”のもので、七生は初めてそれを生で聞いた。
そして七生以上に、シャーロットはそのイントネーションを新鮮に感じていたらしい。男の言葉を聞くなり、あれ? あれ? と首を傾げていた。
「七生様、あのお方変な喋り方をされるのですね……日本語ってますます奥が深いですわ」
「変な喋り方言うな。なんやそのお嬢様口調は」
「シャーロット。関西弁だよ。俺も初めて聞いた」
「かんさいべん? という話し方、ですか?」
頭の上に“はてな”を浮かべているシャーロットに、七生はどう説明すれば良いのか悩んでいる。英語の訛りと日本語の訛りは、同じようで少し違っているので、どう言えば分かりやすいかあまり想像が出来なかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
70 / 178