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「俺、末次造園の末次颯太(すえつぐしょうた)いいます。よろしく」
「城島七生です。と、こちら僕の給仕役をしてくれている、シャーロットといいます」
「よろしくお願いいたします」
「うおー。外国人さんや」
「よろしく〜」とシャーロットにそう言うと、末次は七生に視線を移した。やけに上から下までじっと見られてから、末次はおそるおそる口を開く。
「……オメガ、っすか?」
「あぁ、はい。一ヶ月くらい前に、ここの当主の人と結婚して、この屋敷に……」
「へえ〜。オメガの人も初めて会うわ……俺ベータで庶民やから、希少種のオメガってなかなか会う機会なくて」
末次の家は家業が庭師で、資産家の家にも出入り出来るような老舗のために、一般家庭の生まれでも城島家に依頼されやってきているのだという。
オメガの人口はアルファより少なく、一番人口の多いベータの中には、一度もオメガに出会わないという人も少なくはない。
オメガはそれだけ珍しく、ベータにとっては関わり合いも乏しいため、どうしても好奇の目で見てしまうらしい。
「あ、すいません。こんなまじまじ見られるの嫌っすよね」
「いえいえ、平気です」
赤茶色の髪の下から覗く瞳は、七生と同じ朱色だった。よく見ると、右目の端に泣きぼくろがある。目を細めて笑うと、末次の目元には皺が寄った。
それがなんだか懐っこく見えて、背丈はあるけれど可愛さの目立つ人だなと七生は思った。
「これ、何株か分けましょうか?」
末次は、そう言って七生が見ていた青のヒヤシンスを指差す。
「え、いいんですか?」
「良いですよ。この辺のは特に綺麗に咲いてくれてて、部屋に飾るなら持ってこいなんで」
末次が言うと「なら良い鉢植えがありますわ!」と、シャーロットが張り切って答えて、給仕服のスカートを翻して何処かへ走っていった。
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