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七生は、愛情というものをあまり良く知らない。
母親との関係で培ったものは、おそらく愛というものなのだろう———けれどそれはもう、自分にとって遠くにあるものになってしまった。
頭を撫でられた優しい手の感触も、ぼんやりとしか思い出せないでいる。
“七生は、それでいいの”
“オメガの七生でも、いいんだよ”
母親はそう言った。
オメガの自分でも良いんだと。
だけど、揺らいでしまうのだ。父親はそうではなかったから。他の兄弟と引き離されて、たった一人、使用人と共に過ごすことしか出来なかった。
それは七生の中で良いものになっているけれど、“愛情”というものとはまた、違う気がするのだ。
「ねえ、シャーロット」
「はい?」
お茶を淹れてくれているシャーロットを呼ぶと、彼女はそれに振り返り「どうしましたか?」と言った。
「……愛って、なんなのかな」
心の中にある疑問。
それを率直に問いかけてみる。
「愛とは、ですか? 私は、誰かを愛しい、慈しむ心のことだと思いますが……」
「慈しむこころ?」
はい、とシャーロットは優しく笑った。
「この人とずっと一緒に生きていきたいと思う気持ちであったり、誰かの幸せを心から願うことが出来たり。愛にも色々あるとは思うのですけれど」
「ずっと一緒に生きていきたい……」
そう思える人が、自分にはいるか。七生は考えて、真っ先に浮かんだのが城島の顔だった。けれど、自分のこの気持ちが愛であるのかは、七生には分からないのだ。
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