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一
春の陽気は次第に、夏の暑さへと変わっていく。
七月下旬、すっかり陽射しが強くなり、身体の弱い七生はあまり外に出ることが出来なくなった。程よい気温の環境下でひたすら勉学に励んでいる。その頑張りように、周りの使用人たちは心配すらしていた。
「……七生様、一度休まれてはいかがですか?」
「あぁ、ごめん。そうだね……」
シャーロットが、机にハーブティーの入ったカップを置いてくれる。すっきりとした香りがすん、と鼻腔へ入ると、自然と目が覚めていくような気がした。
はぁ、と息を大きく吐いた七生は机に突っ伏す。
(疲れた……)
城島の仕事がどんどん立て込んでいくようになり、家に帰らない日も増えてきていた。七生は自分も何か出来ないかと考え、今まで出来なかった勉強をやり込んでいるところだ。
家庭教師をつけてもらい、小学校で習う算数の問題や漢字の勉強から始め、最近は高校生レベルにまで練度を上げている。家庭教師からの評判も良く、一度言われたことはすぐに出来るようになる。飲み込みの早さに、周りの人間はとても驚いていた。
城島の役に立つような人間になりたい———七生はそう思うようになっていた。毎日激務だという夫に、自分は何か力になれることがあるのかと模索している。
けれどいつも「お前はいてくれるだけで良い」と言われてしまうのだ。
あの時の、母親と同じで。
“オメガなんだから、七生はいるだけで良いんだよ”
自分も何か力になりたい。
そう思うけれど、なかなか上手くはいかなかった。
……だから、今度こそ。
大事な人の力になりたいと、七生は思う。
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