アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
18
-
ねえ、どうして。
と、七生は聞きたくなった。
どうしてそんな顔をしているんだろう。どうして、自分のことをこんなに、辛そうに抱くのだろう。
(俺のこと、本当は好きとかじゃないのかな……)
そう考えると、自然に涙が溢れた。じんわりと視界が歪んで、目の前が霞む。
「……っう」
七生が溢した嗚咽に、城島は驚いた顔をした。名前を呼ばれるけれど、七生はもう、その声が優しいものとは思えなくなってしまっている。
「ごめん、なさいっ……俺、お、れ……」
そう言った声は、震えていた。
七生は、顔を見られまいと両手で覆う。
こんな自分を、少しも見せたくはなかった。こんな我儘で自分勝手なところを持っている自分なんて、見て欲しくなかった。
何より、好きな人をそんな顔にさせているのは自分なのではないかと思うと、心がズタズタになってしまう気がして、七生は早く遠ざけたいとさえ思った。
「七生……?」
「ぅ、ご、めん……なさい……」
“ごめんなさい”とただ続けて、七生はそれ以外に何も言えなかった。城島もまた、謝る七生を見て何も言えなくなっている。
……俺はもう、城島さんのこんな顔見たくない。
悲しい顔で俺を抱くくらいなら、そんなのいらないよ。
(ねえ、どうして)
———それから、七生は城島とは極力顔を合わせないようになってしまった。
部屋も変え、その場所は城島にも教えることを拒んだ。自室に籠り、ただひたすら時が過ぎるのをぼうっと待っている。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
94 / 178