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「ほんとに来るんですかね……アルファだからか期待が物凄くて。昔から家を継げって言われて育ってきたんですけど、ヒートが来ないって状況に両親が焦ったのか、姉様が早急に家を継ぎました」
女性の幸せを感じて生きていきたかったはずなのに、そんなこと何にも感じさせずにあっさりと家業を継いだ姉に、伊織は劣等感を抱えていた。
それから、自分が家にとって何にも利益にならない人間になってしまった———事実への、悔しさ。
そんな気持ちが、七生には透けて見えていた。どこか、自分が抱えてきたものと似ている気がして。
「僕は、要らない人間になってしまったのかって」
「そんなことないよ」
え、と伊織は言葉を溢した。
「いらない人間なんていない。俺も、オメガってだけで父親からいらないもの扱いされてきたんだ。今でも、俺は産まれてきて良かったのかなって思いになる、けど」
城島が、その考えは間違っているんだと教えてくれる。
「バース性なんて関係なく、俺は頑張ってる伊織くんを応援したいよ」
アルファとしてではなく、一人の人間として。
そう言うと、伊織の瞳が優しく揺れた。
「……七生さんって、凄い人ですね」
微笑んでそう言う伊織の表情はとても優しげで、七生は思わずどきりとした。ヒートが来ないという年相応の悩みを抱えているけれど、彼はれっきとした“アルファ”なのだ。
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