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桐島久貴(ひさき)、22歳。
ゲイバー“ハーフムーン”勤務。
源氏名は咲貴(さき)。
本人は女装趣味のないゲイであるが、中性的で綺麗な顔立ちを活かし、仕事では女装をしている。
今夜もハーフムーンには、日中のストレスを解消しに、たくさんの男性が足を運んでくれている。
そんな中、常連客の浜村に連れられ、この店には似合わない雰囲気の男がやってきた。
寡黙と言えば、聞こえがいいだろうか。
しかし、不機嫌さを隠さないその様子は、寡黙とは表現しがたい。
体格も顔も良いだけに、不機嫌な様子は周囲に威圧感を与えている。
「咲貴ちゃん、新規のお客様お願い。
あまり騒がしいのは好みでないみたいたがら…」
『オレかよ…』
内心溜め息をつきつつも、久貴はボーイの言葉に笑顔を作り頷く。
『仕事、仕事。
見た目はめちゃくちゃタイプだし!』
自分に言い聞かせ、男に近寄る。
「初めまして、咲貴です。
宜しくお願いします」
精一杯の笑顔で挨拶するが、男は ああ、と頷いただけだった。
「咲貴ちゃん、ごめんね~、愛想の無い奴で。
ウチの取引先の五木くん。
あ、ボクはいつものね~」
既に前の店で相当飲んできたらしい浜村が、楽しげにアハハっと笑う。
「浜村さん、程ほどにしてくださいよ」
五木と紹介された男が、やっとまともに口を開いた。
その声に、久貴の背筋がゾクッと震える。
『ヤバい、声までめちゃくちゃ好み』
浜村は取引先と言っていたが、対等の関係なのか、五木は浜村を接待する様子もなく、静かにウイスキーを口にする。
まあ、浜村は浜村で、お気に入りのコと楽しんでいるから、いいのだろう。
煙草を取り出した五木に、久貴がスッとライターを差し出す。
「ありがとう」
低くセクシーな五木の声が、久貴の脳に直接響く。
その日は、大した会話もないまま、酔いつぶれた浜村を支えながら、五木は去っていった。
「…五木龍一郎さん、か…」
帰宅した部屋で、久貴がぽつりと呟く。
男の名を呼んだ唇が、いつもより熱を持っているのは気のせいか…。
『怖い雰囲気だったけど、イヤな雰囲気ではなかったな。
浜村さん、また連れてきてくれないかな…』
気が付くと、久貴は五木との再会を期待していた。
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