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プロローグ
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小さい頃、みんなで影踏みをして遊んだ。
鬼になれば、友達の影をひたすら追いかけて……夢中になって走ったっけ。
でも、もう少しで影に追い付くってタイミングで、日陰に隠れられてしまう。
日陰に隠れられてしまえば、さっきまで目の前にあった影が、一瞬で消えてしまうんだ。
もう少しで、目の前の影を踏むことができたのに……本当に後少しだったのに。悔しくて悔しくて、どっと疲れを感じてしまった。
今のお前は、まさに影踏みの『影』そのものだ。
目の前にいて、もう少しで触れることできるのに、もう少しのところで影に隠れてしまう。
影に隠れられてしまえば、俺にはどうすこともできなくて……ただ、お前が影から出てきてくれるのを待つことしかできない。
でも、ほら。太陽の位置が変わってくれば、お前が今隠れている日陰は、きっと日向になる。
そうしたら、俺はまた、お前とお前の影を捕まえるために走るんだ。
少しずつ太陽の向きが変わってくれば、日差しが差し込んでくるから。
そしたら、
「ほら、出てこいよ」
って、優しく手を差しのべるよ。
もし出てきてくれたら、優しく抱き締めたいんだ。
あっ、今、お前の影を踏んだよ。
俺はギュウってお前を抱き締めて、こう言うんだ。
「碧(あお)、捕まえた」
って。
俺は、碧がいる日陰を、日向に変える太陽になりたい。
明るい明るい太陽になりたい。
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