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その日は気になっていた映画を観てからバイト先へ向かった。歩いて5分の普段と違い、二駅くらいは距離があるだろうか。
おにぎり一つ分の値段を節約するためにのろのろ歩いていると、風に乗って音楽が耳まで届いた。懐かしさすら覚えるバンドサウンドに自然と身体が動き出す。刻まれるリズムと足を踏み出すスピードが合わさり、足の裏拍を取るみたいに頭が揺れる。
左手首のボロい腕時計が壊れてなければバイトまでまだ余裕があって、それがわかるともういてもたってもいられなかった。音のする方へ足が向き、次第に近くなるそれに胸が高鳴る。
当日券があれば時間まで覗いていこうか? 見知ったバンドマンがもし居たら……少し気まずいけれど、成功者は光流の事などきっと覚えていない。そう思えば気が楽だった。
ライブハウスの裏側まで辿り着くと、ちょうど転換中で搬入口が開いていた。ここで通行人と目が合った時のなんとも言えない居心地の悪さがバンドマンを簡単に現実へ引き戻すと知っている光流は、慌てて死角へ身を隠す。さっきまで音が鳴っていたのだから、少なくとも次が始まるまであと10分か15分はかかるであろう。彼らがはけてから動き出しても十分間に合う。
声質からして光流と同じかそれより若いくらいの、まだ青いバンドだ。盗み聞きするつもりはないが、やはりテンションが上がっているようで声が大きいのだから仕方ない。初お披露目の新曲について色々言い合ったり、サビ前のキメが甘かったメンバーの反省の言葉が聞こえて来て微笑ましい。少しの嫉妬心と、それを大幅に上回る感動が押し寄せた。
搬入口の扉が閉まり静かになると、暫く様子を伺いやっと立ち上がる。
しかし、もう誰も居ないはずのそこで光流は信じられない光景を目の当たりにする。
「っ、……ん、んゥ」
わずかに溢れる甘い声の正体は、片方の手で自らの鼻から顎までを覆い、もう片方で性器を扱く細身の男だった。しまったと思った時には既に手遅れで、汗を流して顔を熱らす男の潤んだ瞳が光流を映す。
そのシルエットの美しさと、まるで猛獣みたいな鋭い眼光の恐ろしさは脳みそを一瞬でごちゃ混ぜにした。腰が揺れ、浅い呼吸を繰り返す姿が生々しい。
男がそんな風になっているところを見たのは当然初めてで、光流は堪らず逃げ出した。走っているうちに手汗がわっと溢れてきて、何度か足がもつれて転びそうになった。それでも走る。鼓動の速さに疲れが追いついてくれるまで。
彼の掌は既に白く汚れていた。なのに音を立てて擦られていたものは、まだ硬いまま上を向いていた。
何者なのかもわからない男に当てられた身体は狂ったように熱を持ち、バイト先のコンビニへ到着する頃には光流までジーンズを張り詰めさせていた。
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