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キイ、と小さな音を立てて扉が開く。
出てきたのは光流の予想通り、顔を熱らせたドラマーだった。光流の存在にまったく気がつかないまま、そいつはすぐにベルトを緩めて冷えた壁にもたれかかる。彼に落ちる雨粒は、彼のためにあるとまで言える美しさだった。
建物同士の間から、辺りの人の気配を見つけてはハラハラするのは光流の役目じゃないはずなのに、落ち着かない。光流はあの日見たこいつの姿を、他の誰にも見せたくないと思い始めていた。
どこかから若者2人組の声が迫って来ているのを察した光流は、まさに今これから行為をしようとしたドラマーの腕を引っ掴んで光流がいた細い隙間に連れ込んだ。
「え……誰」
思っていたより声が低い。あの日の嬌声は相当上擦っていたようだ。
「いつ人が通るかもわかんねえ場所でお前、正気か」
「じゃあアンタも共犯になればいい」
にやりと不敵な笑みを浮かべたその男は、さっき無理やり中断させられた行為を再開する気でいた。それも光流の目の前で。
「あぁ、さっき中にいた人か。俺から一度も目を離さなかったから覚えてる」
徐々に強まる雨の中、びしょ濡れの男が至近距離で光流に囁く。唇についた雨粒を光流の耳に移すかの如く接近する男を前に、光流は指一本動かせない。膨らんだ股間を光流のそこに擦り付けられてやっと気づいた事がある。
「あれ? アンタも勃ってるじゃん。そんな良かったかよ。惚れちゃった?」
「……お前のドラムが嫌いだ」
嫌いだ。自分と違い、ドラムにも人にも音楽にも縁にも運にも愛されているであろうお前が、妬ましくて憎らしい。悔しい。
迫ってきた唇に自分のそれを押し当てて、互いの下着の中に手のひらを滑らせる。悪ふざけで服の上から握るのは学生の頃に友達とやり合ったことはあるけれど、自分以外の感触をここまでリアルに感じる事は流石に初めてだ。光流と同じかそれ以上に大きなゴツい手にそこを弄ばれるのも勿論初めて。
口内に舌を入れられた生々しさに驚き、目を開いて後悔した。額から頬を伝い、汗にも見える雨が男の色気をカンストさせている。長い睫が水気を溜め込み、下で光流の指がイイ所に触れた瞬間、僅かに振動して涙みたいにこぼれ落ちる。
これ以上は止まらなくなる。そう確信しかけた時、先ほど目の前の男が出てきた関係者用のドアが思い切り開かれた。
「おーいクラさーん、いるー?」
数名のバンドマンの声がすぐ近くで聞こえる。それには流石のこいつも動揺せずにはいられなかったみたいで、光流の性器から手を離した。
「……今日はありがとう。また時間あったら見にきてよ」
それだけ言うと、雑に自身のズボンを引き上げて光流に背中を向けた。コンビニを探していただとか苦しい言い訳を並べるそいつの声が聞こえてきたから、クラさんというのが名前らしい。
手のひらに付着した白濁を見つめ、思わずその場に座り込む。はしたなくずり下がった下着と、まだ大きいままの性器を繋ぐ透明な糸を見ていられなくて目を逸らした。
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