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じゃあ、もっと真剣に考えろよ!
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逸郎には自分の居場所と呼べる物がなかった。
母と過ごしたあのアパートがそうだったのか—
ルカと過ごした広めのワンルームがそうだったのか—
そう考えたりもしたが、ピンと来ない。
友達だってろくに出来なかった。
引取先のであった、叔父の家などもってのほかだ。
そもそも、居場所とはなんだろう。
きっと帰りたい場所だと逸郎は思っていた。
ならば、やはり逸郎に居場所など最初からなかったのだ。
そして大学入学を機に一人暮らしを始めた時、やっと居場所が出来た気がした。
7Kユニットバスの広いとは言えない部屋。
賃貸ではあるが、やっと落ち着ける場所を見つけた気がしたのだ。
そんな場所に他人を居れるのは嫌だった。
それが例え、英介だとしても——
「イッちゃんの部屋、何もないね…」
必要最低限の物しかない室内を英介は猫の様にキョロキョロと見渡しながら進んだ。
そうやって隅々まで観察されるのも、逸郎にとっては不愉快だった。
「いいから、さっさと用意しろ」
不機嫌に言い放ちながら、立てかけてある折りたたみテーブルを用意する。
さすがの英介も、その雰囲気を察して、黙ってフローリングの床へと腰を下ろした。
用意されたテーブルの上に勉強道具を広げ、硬く口を結ぶ。
「で、どこがわかんないわけ?」
「えっと……わかんない…」
そう英介が上目で伺う様に言った瞬間、何かを叩きつける様な大きな音が響いた。
その音がテーブルを蹴飛ばした音なのか、自分が叩きつけられた音なのかはわからない。
だが、気付いた瞬間には、英介は固いフローリングの上へと組み伏せられていた。
「えっ?」と声を出す間も無く視界を黒い影が重なり、柔らかな感触が唇を覆う。
柔らかな熱はほんの一瞬で、熱い吐息となる。
きつく押し当てたられたり、形に沿う様にねっとりと舌を這わされたりすると、混乱に息も上手く出来なくなった。
喘ぐ様に唇を開けば、そこに舌をねじ込まれ、歯列をなぞられる。
短い息を漏らしながら、英介は必死で顔を左右へ振った。
足をバタつかせてもみたが、それでも追ってくる唇に逃れられなかったのは、なにも両手を押さえつけられているからではない。
最初から、本気で抵抗する気が英介にないからだった。
最終的には舌を絡め取られ、英介自身も首を擡げて「んっ」と切ない吐息を漏らしていた。
「マジでふざけんなよ…」
その声が耳に届いて始めて唇が離れていることに気付く。
始めて味わう快感の余韻も残さないほど、その声は低く唸る様に英介に降り注いだ。
「さっき、俺と一緒にいたいって言ってたじゃねーか!?じゃあ、もっと真剣に考えろよ!」
唸り声は、怒鳴り声へと変わっていた。
だが、英介は怖くなかった。
恐々と開いたその目に映ったのは、翳っていてもわかる泣き出しそうな逸郎の顔だった。
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