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じゃあ、エッチしよう
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「どんだけだよ…お前…」
見舞いに来て開口一番それかよ―と、英介はため息をつきながら顔を背けた。
自分自身、どんだけだよと思っている。
逸郎が出て行ってからヒステリーを起こし、散々泣き喚いて、最終的には嘔吐発熱するなんて、相当病んでいるのはわかっている。
だからこそ、みなまに言わないで欲しい。
あきれ顔の達也に背を向けたくて、寝返りを打った瞬間、英介の目からまた涙が零れたが、達也には見えなかったのだろう。
「昨日、健一に聞いたぞ。イツローと会ってたんだって?」
なぜここで健一の名前が出てくるのか、達也の責める様な口調よりもそれが気になった。
だが、説明の出来ない涙が溢れているので、達也の方を向くことも出来ない。
静かに息を押し殺す英介の背中に向かって達也がポツリと漏らす。
「健一、一昨日イツローに会ったらしいよ。なんか色々聞いたとは言ってた」
それで、健一の名前が出てきた事は納得が行く。
一昨日と言えば、逸郎が英介を拒絶して出ていった日の事だ。
一体どんな話をしたのか、逸郎はどんな様子だったのか聞きたい事ばかりだったが、聞きたくないと言う気持ちもあってやはり声を出すことも出来ない。
もどかしさもあってか、英介の肩が小さく震える。
さすがに達也も英介が泣いている事に気付いたのか、小さくため息をこぼす。
「どんだけ好きなんだよ…」
その言葉に、英介は勢いよく体を起こした。
「そうだよね?俺、イッちゃんの事好きだよね!?」
涙ながらに訴える英介に、達也はやや引け腰になりながら「わ、わかんねぇよ…」と弱弱しく言った。
そして、やや決まり悪そうに頭を掻いた。
「正直、その好き俺にはわかんねぇ。ガキの頃もそうだけど、こんな風になるくらい人を好きになったことないし、正直、男同士で…」
―気味が悪い…そう言ったニュアンスの言葉を飲み込んだのだろう事は、英介にもわかった。
それは当然だろう。
世の中にはそれを耽美と喜ぶ人も居るかも知れないが、比率からしてみればそう考えられる人の方が少ないのだ。
逸郎もその点を気にしていた。
だが、逆に考えれば、それさえなければ自分を愛してもいいと言うことにならないだろうか。
それは希望とは言い難い考えだ。
逸郎の事をいくら好きでも、家族や友達を捨ててまで、逸郎の元へ走る覚悟は英介にはない。
「つーかさ…」
気が付けば俯きはらはらと涙を流している英介を見下げて、達也が大げさに首を振った。
「健一に、お前が寝込んでるって言ったら、爆笑してたよ」
「は?」
本人はこんなに深刻なのに、笑い飛ばすなんて何事だと思うと、一気に涙も引っ込む。
達也はその時の事を思い出しているのか、口元に笑みを浮かべながら続ける。
「いや、俺はマジでわかんないけど、健一に言わせれば下らないらしいよ。お前ら…」
「は?ケンちゃんに言われたくないよ…」
「まあ、普段なら俺もそう思う。でも、今回は健一の方がまともな事言ってると思うな」
「ケンちゃんが?」
「そうそう。なあ、ガチャは俺のこと好き?」
「はぁ?」
突然、話が方向転換したように思えて、英介は素っ頓狂な声を上げた。
好きか?と聞いた割には、達也の顔に照れなどは浮かんでおらず、むしろいつもの間抜け面そのものだった。
ただ、答えを待つその瞳は真剣に見えて、英介は躊躇いがちに頷く。
「うん…まあ、好き…かな?」
「じゃあ、エッチしよう!」
またも呆気なく放たれたとんでもない言葉に、英介は言葉を失う。
さっきまで涙で濡れていたはずの目は見開き過ぎて、カラカラと急速に乾いていった。
冗談だと言ってくれる事を願いながら英介が見詰めていると、達也は堪えきれなかった様にブハァっと息を吐き出した。
「って、自分で言って気持ち悪いわ」
一応雰囲気づくりをしていたつもりなのか、必死に保っていた真顔をこれでもかと言うくらい崩して自らを抱くように腕を摩っている達也に英介は眉を潜めた。
「もう、全然意味わからないんだけど…」
いつものことだが、達也の自己完結な態度に英介は次第にイラついてきた。
それを察する事もなく、達也がヘラヘラと笑う。
「とにかく健一が言うには、お前ら阿保らしいよ」
「だから…」
「健一に言われたくないって言うんだろ?わかってるて、いいから聞けよ」
健一だけじゃなく、達也にも阿保だと思われるのは癪だが、英介は達也の話を待った。
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