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すれ違い④
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「ふーん……誰?」
「いや、その、なんだ……大翔?」
「大翔さんじゃないはずだ。部活がある日は、いつも大量にパンを買い置きしてるから」
よく知ってるなと感心する半面、いいわけに詰まって脂汗がにじみだす。どもりながら何かいい案はないかと画策する。だがその時……。
「もしかしてさ、好きな人にでもあげんの?」
それがあったかと、天の救いに飛びついた。
「そう!好きな奴にあげんの!そいつがいつも腹減らしててさ!よくわかったな、わた……ひぃ!」
上手いいいわけが出来たと話に乗ろうとしたが、腕を掴んだまま立ち上がった彼の冷徹な視線に、口を閉ざす。
今までこいつは怖い顔しかしないと思ってきたが、これほど冷たい眼差しで見つめられたのは初めてだ。恐怖のあまりその場に尻もちをついてしまう。
渉は高い位置から見下しながら威圧してくる。
「へぇ、鳴海さんに好きな人がいたんですね。それってどなたですか?この学校?同じクラス?性別は?おみしりおきになりたいなぁ。ねぇ、そいつのこと教えてくださいよ。事細かに、細密に……ねぇ」
いや。教えた時点で殺されるぞ、そいつ。
俺は高圧的なまなざしとそれに不釣り合いのさわやかな笑顔の二重苦に耐えきれず、悲鳴をあげて腕を振り払う。その場を全速力で逃げ出した。
追われるかと思っていたが、教室近くまで来て背後を振り返ると誰もいない。教室について大翔をみたとたん、次の授業が始まろうとしているのに涙を流して生還したことを喜んだ。
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