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最後の鬼ごっこ②
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「それにしても、お前ら仲良くなったよなぁ」
昼休み。四個目のパンであるコロッケパンを一口かじると、星野さんが呟いた。俺は鳴海さんが毎日作って来てくれる、手作り弁当のミニトマトを箸で口に運ぶところ。鳴海さんはペットボトルのお茶を飲んでいた。
「まぁ、あの時は渉に嫌われてると思ってたし……」
「勘違いだよね」
弁当を食べ終わった俺が食後の一服に煙草を一本、口に加えて火をつける。
数週間前まで、何故か恐れられていた。俺としては恋愛におけるアピールだったが、鳴海さんにはそれがイジメ方面の行為であると思われていたらしい。
まぁ、その誤解も今は解けて、こうして仲良く飯を食うまでに進展した……したが、問題がひとつ……。
「あ、火がない……かも」
俺と同様一服するため、たばこを口に咥えたまま彼が制服のポケット中をまさぐっている。どうやらライターが見つからないようだ。
ライターを差し出そうと、尻ポケットに手をいれたとき。鳴海さんがライターをあきらめて、俺の方を見た。そして……。
「渉、火もらうぜ」
煙草をくわえたままの鳴海さんが、俺に顔を近づけてきた。呆気にとられて硬直すれば、俺の咥えている煙草の火先に彼の煙草の先端があてがわれ、ほのかに赤色の火がついた。
充分に熱が伝導したのを確認した鳴海さんは、すぐに身を離す。その時間、およそ一分にも満たない。しかし俺にとっては、一時間のような夢見心地だった。
「ありがとな」
煙を口から吐き出しながら、笑顔をくれる。それに口元がゆるんだせいか俺の口から煙草が滑り落ち、偶然下に置いていた俺の学ランの上に落ちた。それをみて、代わりに悲鳴をあげた。
「ちょ、渉!火!」
「あ、うん。まだ、火いる?」
「違くて、学ランが燃える!」
学ランの上から煙草を取り上げ、上にかかった灰をはらう。幸運にも火はつかなかったが、灰によって少し汚れがついてしまったようだ。
学ランを持った鳴海さんが突然立ち上がる。
「どこ行くの?」
「すぐ下の水道で洗ってくる」
「いいよ、俺のだし」
「俺が煙草の火貰ったから落としたんだろ。俺のせいだから、行ってくるよ」
学ランなんてどうでもいいから、鳴海さんともっとそばにいたい。
そう口に出せないまま、彼は屋上から走り去る。後に残った俺は、しばらく出入口の扉を見つめたままだった。
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