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◆06
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一応は付き合っていることになっているのだろうか。
それからも、二人は外では他人のままだった。
もちろん、一緒に住んだりもしない。
連絡先も結局、交換しなかった。
ただ、ヤスヒコはシュウヘイに自分の部屋の合鍵を渡した。
「シュウが来たいときに来てくれればいいから」
そう言われたものの、やはり気が引けて、シュウヘイはいつまでもヤスヒコの部屋を訪れる事が出来なかったのは言うまでもない。
もちろん、ヤスヒコに会いたい気持ちはある。
もっとヤスヒコを感じたいと言う性的な欲求だってその頃には湧いていた。
しかし、自分がヤスヒコの部屋に入るのは、大袈裟かも知れないが、ヤスヒコの日常に踏み込んでしまうのと同義な気がした。
そして、それは酷くいけないことの様な気がしたのだ。
なんでも持っていて、なんでも出来る彼に自分が近付くのは、まるで道端で物乞いをするのと同じくらいの惨めさがあるのではないかと思えた。
おとぎ話ならば、王子に見初められ、可哀想な女が些細な出来事で誰もが羨むお姫様になると言うのはありがちな話だ。
だが、幼い頃から自分を卑下し、周りの顔色ばかり伺っていたシュウヘイは気付いていた。
お姫様になれる女たちには、きちんとその資格があることに。
白雪姫は元々がお姫様だし、シンデレラだって家中では蔑まれていても、城の舞踏会に呼ばれる程の家柄の出である。
おとぎ話の本質は残酷なのだ。
人魚姫のように一時、夢を見て、最後は泡になって消えるのならそれでもいい。
自分はどうなってもいいのだ。
だが、彼に何かを与えるどころか、奪いかねないのが一番怖い。
普通ならば、そんなことまで考えないのだろう。
だが、シュウヘイは普通ではないとずっと自分に言い聞かせて来た。
好きと言う気持ちすら、どんどんマイナスの方向へ行ってしまってもやむ負えないのだろう。
そうして迷っていれば、お決まりのように手を引かれる。
今までは全く人目につかない場所であったが、今回は違う。
大学構内、昼時、生徒が集まる正門近く。
急に腕を掴まれてぐんぐんと手を引かれるシュウヘイに、本人だけでなく、周りの人達も目を丸くしていた。
「ちょ…ちょっとスルガくん……」
公衆の面前では他人を装うのが当然だと思い込んでいたため"スルガくん"と呼んだだけだった。
だが、ヤスヒコは抗おうとするシュウヘイを険しい表情で一瞥すると、周囲の視線やざわつきも御構い無しにズルズルと彼を引きずって行く。
今回、シュウヘイが強引に詰め込まれたのは、免許取り立ての青年が持つには似つかわしくない高級車の後部座席だった。
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