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序章
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今日も空から下界を見渡す
いつもと変わらない世界の中、退屈とか楽しいとかの概念はない
ただそこにいるだけ
そう、俺は何の為に生きているのか?
伝説の生き物だから死んでいるのかも知れない
そんな事すらわからない
だけど記憶だけは鮮明に受け継がれていた
生まれ変わっても俺のまま
もうどうでもいい
だけど、人間の世界には興味はある
変わり者だから仕方が無い
「今日は暑いから水浴びでもするか」
普段なら人間の目には触れない所を選ぶけど、今日は紫陽花が綺麗だったから人里まで降りて来た
周りの様子を伺う為に、木の上から地上を見渡した
「相変わらず人間は殺し合うのか」
下らない事だ
本当にいつまでたっても学ばない
自己中な人間共
だけど今日はいつもと違っていた
殺された人間には興味は無い
死にそうな人間も同じ
俺にはお気に入りの人間がいた
妙な組み合わせの二人
一人は人のよさそうな男
もう一人はかなり霊力の強い陰陽師
二人でいる時はいつも幸せそうに笑っていた
あの陰陽師が笑うなんて信じられない
でも、人のよさそうな男は俺を見つけるといつも食べ物を分けてくれた
カラスは嫌われているのに彼は違っていた
いつも木の上から畑仕事をする彼を見るのが楽しかった
大粒の汗をかきながら一生懸命に野菜を作る姿
虫なんか殺せばいいのに、すぐ逃がす優しい人
動物がお腹を空かして畑を荒らしても怒らないおおらかな人
そんな彼が好きだった
「おっ、今日も来たのか?ん~、魚でも食べるか?」
彼は面白い奴だった
カラスの俺に魚を勧めて来る
どうやら何でも食べると思っているらしい
「今朝、釣りをしたら大量でさ・・・なんてカラスに話をしてもわからないよな」
そう言いながら、焼き魚を地面の上に置いた
「遠慮するなよ?」
魚・・・
まぁ、食べられない事も無いけど一応俺は八咫烏
何も食べなくても生きているカラス
なーんて言う面倒臭い事は考えないで食べてみるか
「美味いか?」
そう言って笑う笑顔が好きだ
この人間は心が優しい
俺にはわかる
「肉の方がいいか?確か昨日猪の肉を・・・」
カラスって肉食だと思われてるのか?
そういう所も好きだ
だけど、彼にはあの陰陽師がいる
俺にだってわかる
陰陽師と居る時の彼が一番輝いているから
俺に入り込む隙なんか無い
だからずっと見守ろうと決めていた
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