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マンゴー味②
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「おう、来たな、坊主」
レイの指示に従い、大悟は毎日ランチをご馳走になっている元ハナムラ源田の店にやってきた。こういう言い方にしたのは、自分達はツケ扱いになっているにも関わらず、請求が全くこないからである。
「こんにちは。あの、レイの指示でやってきたんですけど……」
「ここだ、カナリア」
全て言い終わらないうちに、窓際の奥のテーブル席から声がかかる。声のする方向へ足を向けてみれば、レイが座っており、テーブルには大きなかき氷が置かれていた。Kが食べていたものと大差のない高級かき氷だったが、シロップはオレンジ色だった。
「ひとりじゃ食べ切れないから、手伝ってくれ」
怒られることを覚悟していた大悟はレイの意外な申し出に拍子抜けした。
「マキを呼ぼうとしたんだが、情報屋仕様だから他の人間はダメだとか言われてな」
そう言って肩をすくめるレイ。元ハナムラという肩書のせいか、源田には頭が上がらないように見えた。
「おまえさんはマンゴー味じゃ。勿論本物のマンゴーをビューレ状にしておるぞ」
源田の蘊蓄を聞きながら、大悟はレイの向かい側に座った。程無くして、源田が氷の入った水とコーヒーゼリーを差し出した。
「あの、俺、まだ注文してないんですけど」
「坊主、コーヒーゼリーは嫌いなのか」
「いえ、好きですけど」
「なら食え」
サービスということなのか、言うだけ言って、源田は去っていった。
「おまえはシラサカのパートナーだから、気を遣ってんだよ」
目を丸くする大悟に、レイは優しく語りかけた。
「ゲンさんがハナムラの人間だった頃、ウチと犬猿の仲だったヤクザによって拉致られたことがあってな。表向きは知らぬ存ぜぬで通され、ボス同士で話をつけることになったんだが、それじゃあ遅いからって、シラサカとマキが救出に行ったんだよ」
レイの口から始末屋の武勇伝が語られるのも珍しい。大悟はコーヒーゼリーを口に入れつつ、うんうんと相づちを打つ。
「知らぬ存ぜぬで通されてる以上、バラすわけにいかないし、当時そのヤクザはウチと同等の戦力を持っていたから、事を荒立てると全面戦争になりかねない。だからシラサカとマキは丸腰で乗り込んだ。あいつらは丸腰でも戦闘能力高いけど、それなりに怪我もしてな。いまだに責任感じてんだよ」
Kの体のあちこちには傷がある。そのうちのひとつだろうか。なんにせよ、源田がシラサカやマキを特別扱いする理由がよくわかった。
「あのとき、わしの居場所を特定し、始末屋の二人を動かしたのはおまえさんだろ」
どこから話を聞いていたのか、源田がやってきて、レアチーズケーキを2皿置いた。
「ヤスオカが慌てておったぞ。花村の命令を無視して動きよってからに」
ちなみにヤスオカとは、レイの前に情報屋のリーダーだった人物である。
「昔のことですから、忘れましたよ」
Kは花村の命令には絶対に従うという話だった。そんなKとマキを動かしたのはレイだったのだ。
「ところでゲンさん、まさかこれも食えなんて言いませんよね?」
「デザートは別腹だ。ちゃんと食えよ」
大悟はレイと顔を見合せ、唖然としたのだった。
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