アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
発情期を抑えるために番になることは許されますか?~ぼくのうた きみのこえ~
ぼくのうた きみのこえ1~発情期を抑えるために番になることは許されますか?~
-
「璃玖が発情期を迎える時、必ず璃玖の前に戻ってきて、もう一度告白する。璃玖とデビューして、番になるために」
「なに言って……」
「璃玖と番になるのは……俺だ」
まるで言い捨てるように宣言した一樹は踵を返すと、そのまま階段に向かって急に歩き出してしまう。
このままでは、今までついた嘘が何の意味がないと焦った璃玖は、一樹を呼び止めるため、急いで右足を庇いつつ立ち上がると、一樹を追いかけ、腕を掴んだ。
「待ってよ! 何、勝手に言い捨てて、どっか行こうとしているの! 二年後? そんなの無理だからね。僕は聖さんと番になるって、何度も言っているよね!」
「俺が好きでい続けるのは勝手だろ!」
「やめてよっ! 二年経っても何も変わらない! お願いだから、僕のことは諦めてよ。忘れてよ!」
「忘れられるかよ! だから、俺は運命を変えてみせる。でも、今は何をしても無駄なことはよく分かった。だから二年後、もう一度璃玖の前に戻ってきて、俺を好きにさせてみせる」
「いいかげんにしてよ! そんなこと無駄だから!」
今度は階段を下りようとする一樹の腕を、璃玖は必死に何度も引っ張った。
「無駄かなんてわからないし、俺の勝手だろ! 璃玖には関係ない! 離せよ!」
一樹は掴まれていた腕を璃玖が離すよう、身体を捩じって腕を振り払った。
すると、思わず痛めていた右足に璃玖は体重をかけてしまい、踊り場からバランスを崩してしまった。
「あっ……」
「えっ! 璃玖っ……!」
璃玖の足のケガに気が付いておらず、振り払っただけでバランスを崩すとは思っていなかった一樹は、階段に向かって倒れそうになる璃玖の手を掴もうとする。
だが、伸ばされたその手は、あと一歩のところで璃玖の手を掴むことができず、璃玖の身体は急勾配の階段に、背中から向かっていってしまった。
「……!」
空気だけを掴んだ手の先で、璃玖が一瞬、一樹に何かを呟き笑ったように見えたが、一樹には聞き取ることができなかった。
璃玖はそのまま階段へ勢いよく背中を打ち付けると、音を立てて転がり落ちていった。
「り……く……」
何が起こったのか理解が追いつかなかった一樹には、璃玖が階段を落ちる姿は、まるで現実味のない、スローモーション映像のように目に映った。
だが、最下段まで転がり落ち、ぐったりと動かない璃玖を踊り場から見下ろした一樹は、すぐに現実に引き戻され、慌てて階段を駆け下りた。
「璃玖っ! 璃玖っ!」
階段を下りている間も、一樹は必死に、璃玖の名前を何度も叫び続けた。
(一樹……)
一樹の声と階段を下りる音が近づいてくるように璃玖は感じたが、それは不思議と、次第に遠のいていくように感じ始めた。
(いつ……き……)
璃玖は一樹の名前を呼ぶため、声を出そうとする。
だが、口はおろか、唇を動かすことさえもできなかった。
それは、全身に感じる、右足の痛みとは比べ物にならない痛みのせいだと璃玖が気が付いた時には、そのまま意識が遠のいていく感覚に、ただ、身を任せることしかできなかった。
好きだけでは一緒にいられない。
運命に抗うか、それとも従うことしかできないのか……。
けれど、神様は意地悪だ。
不平等の世界を作っただけでなく、たったひとつの約束まで奪っていくなんて……。
この世界には、男女の他に、もう一つの性が存在する。
あらゆる能力に長け、エリートであるが故、世の中の重要ポストにつくα。
人口の大半を占める平凡なβ。
そして、αをヒートという激しい発情状態にし、狂暴化させてしまう発情期を持つため、社会のお荷物とされるΩ。
この世界は平等と謳いながらも、階級社会である。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 15