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愛撫 -2-
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『いま家に到着しました。鍵は開けておきますので、いつでもお越しください』
櫻井は帰るなり武上にメールを一通入れ、超特急で服を脱ぎ捨て体を洗った。それも終わると、置きっぱなしにしていたローションのボトルと一緒に風呂場を出て、裸のまま床に敷かれた布団の上に胡坐をかいた。
そして櫻井は昨日と同じ行動を取り始めた。ローションを掌に取り、指と肛門に絡めていく。十分だと思ったところで、息を吐いて指をアナルにうずめた。
異常であろうがなんだっていい。あの鉄仮面に少しでもヒビを入れられるなら、なんだってする。
指は単純な抜き差しを繰り返していた。これが一番楽だし、感じると思えば、感じるような気もする。武上が来るまでにある程度慣らしておきたいのも正直なところだ。今日も何を仕掛けてくるのか分からないのだから。
何分か経った頃だろうか、チャイムの音、それに続きドアの開く音がかすかに聞こえ、意識もしていなかった環境音も少しクリアになった。
そして床に鈍く響く足音。
「失礼します……」
語尾に向かってボリュームの下がっていく声。それが聞こえたのと、姿が現れたのはほぼ同時くらいだった。
悪くない、腹の中でほくそ笑みながら櫻井はゆっくり指を引き抜いた。
「どうも、ゆっくりしてってください」
櫻井はアナルへの愛撫だけでどうにか半立ちにはなったペニスを隠すことなく、胡坐のままで武上を迎えた。
武上は布団の横に佇んで、手から提げていた紙袋を静かに床に置く。少しの間のあと、武上は櫻井の目にまっすぐ視線を向けて話し出した。
「少々お話することがあります」
「はい」
「前回の開発のあと、俺が疑問を感じた点について、その場であなたに質問する許可を黒宮からいただきました」
「質問?」
願ってもいないことだった。
彼が自分への疑問を投げかける、つまりは興味を自主的に表現してくれるのだという。
ただ指令をこなすだけであった人間が腹に何を抱えていたのか、その断片だけでも曝け出すのだ。
「それも櫻井さんからの許可が前提ではありますので、確認を取らせていただきます。今後、俺が疑問を感じたことについては、質問をしてよろしいでしょうか」
「もちろんです……ただ」
この申し出自体、櫻井が期待するよりも大きな変化だ。しかしせっかくの機会を活用しない手は無い。
「俺にも質問させてくれれば、という条件付きです。俺が、武上さんについて疑問に思ったことを」
「了解しました」
レスポンスは早かった、この程度は予想していたか。
「それでは早速ですが、ひとつ質問があります」
武上はまだ布団の横に立ったまま、その質問とやらに移った。
「なぜ既に、自慰を行っているのでしょうか」
最初の質問は予想通り、しかし予想以上に素直な問いかけ方であった。
「少し慣らしておいた方が武上さんの手間が省けると思って……余計でしたか?」
「分かりました、そういうことでしたら問題はありません。しかし、そこまでして自身の性感帯の開発に積極的なのはなぜでしょうか」
「……それは」
間髪入れずに質問。この場での模範解答を探り出すのに、櫻井の方が言葉に詰まるほどだった。
「『その先』に期待してるからです」
結論としてはいつもどおり。
自分の素が彼らにとっては意外性に富んでいることは、重々承知している。
「まさかケツ弄りまわすだけ弄りまわされて終わりとは思ってませんし……終わりじゃないですよね?」
武上はすぐには答えない。
彼の反応は迷いがない限りノータイムのはずだし、思考を巡らせるほどの難題はコンスタントにふっかけられるようになってきた。
それでも……まだその表情が揺らぐまでには至らない。
「現在はそれを予定して進めております」
武上の口が開いた。
「しかしそれも黒宮の気分次第です、場合によっては今行っている開発を打ち切る可能性もあります。それについてはご理解ください」
「……そうですか」
努力がすべて水の泡になることもあるわけだ。ならば、このことは聞くべきかどうか……。
「ついでにもうひとつ、質問いいですか」
「どうぞ」
「なんで黒宮さんはあなたに俺の相手をさせてるんですか?」
同じ状況に立たされればどんな人間も気になるはずだ、つまらない質問と受け取られるかもしれない。
しかし、これだけは聞いておかなければ納得はできない。
「黒宮は労力を嫌います、前準備に自身の時間を割くことは望んでおりません」
武上の返答は早かった。
「それとは別に、黒宮はあなたがどの程度の行為を受け入れるかに興味を持っています。俺を遣わすのもその実験の1つです。回答はこれでよろしいでしょうか」
「……はい。えぇ、そりゃもう充分ですよ」
シンプルで分かりやすい答え。そしてただただ、胸糞が悪い。
「他に質問はありますか」
「いえ、とりあえずいいです」
「それでは開発に移らせていただきますが、まずひとつ、黒宮に新しく言い渡されたことがあります」
「はい?」
「フェラチオの方も慣らしておくように、ということです」
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