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愛撫 -4-
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熱湯のようなシャワーを浴びながらも、まだ『冷めた』状態から覚めてはくれない。
体がほとんど自動で風呂での所作をこなしている間に、頭は今この場所と完全に離れて、とりとめのない思考の海で浮き沈みしている。
久々にスイッチが切れた。
なぜだ?
あいつが興奮してないのが悔しかった?
ピンとこない。
引き金であったのは確かかな。
自分のやってることを冷静に見つめすぎた。
そうでありたい。
もう考えるのはやめよう。
バカらしくてもうまくいけばいいんだ。
そうだ、黒宮に取り入れ。
アホくさい、こんなことで?
もう既に飽きてるんじゃないか。
それにリスクが高すぎる。
うんざりしてきた。
でも今更やめてもなんのリターンもない。
今までなんのためにこんな茶番を進めてきた?
「あいつらを守る力が欲しいからだよ……」
そうだ、これはいつもと同じ、無茶して取りに行く仕事のようなもの。
大丈夫だ、戻ってきた。
櫻井は確認を行って、風呂場から上がった。
部屋に戻ると、武上は身なりを整えて直立のままスマートフォンを操作していた。
「……あの、あまり綺麗な部屋じゃないですけど、どうぞ寛いでください」
着席を促すのに、今更随分よそよそしくなってしまう。
武上はチラリと櫻井を見たあと、スマートフォンを胸ポケットにしまった。
「おそれいります」
武上はスッとその場で胡坐になる。しかしどうにも姿勢が堅苦しく、武士の作法のようだった。
全裸にバスタオル姿の櫻井と向かい合わせになる形で、武上は頭を上げた。
「ひとつ、確認をいただきたいことがあります」
「はい?」
「本日はこちらに泊めていただいてよろしいでしょうか」
「……はい?」
なんの悪ふざけかと櫻井は思ったが、武上は櫻井の顔を真っすぐ見据えたまま言葉を続けた。
「開発の予定日は明日であったところを、櫻井さんからの提案で今夜に繰り上げいたしました。
こちらに泊めていただければ、起床時から即行えると思い提案しました。いかがでしょうか」
「それは……どうでしょうね」
これも今、黒宮と連絡して決めたことか?こちらの反応をうかがうのが魂胆なんだろうか。
「泊まってもらっても構わないんですけど……布団これしかないんですよね」
櫻井はそれまで愛撫が行われ、ローションや汗で湿った布団を指した。
「お気づかいなく。指定された場所で眠ります」
「……便所で寝ろと言っても?」
「問題ありません」
「いや、俺が困ります」
櫻井は諦め気味にため息を吐いた。どうやら泊まる気は本当にあるようだ。
「その布団で良ければ使ってください、シーツだけ換えるんで」
「櫻井さんの寝場所は」
「俺は椅子でも寝れるんで。シャワーも使いますよね?」
櫻井はクローゼットからバスタオルを取って渡して、自分のパンツも取り出し履いた。
「俺が椅子で寝ます」
「ん?いや、いいですよ。あ、そこがイヤなら別ですけど」
「突然申し出て、布団まで取ってしまっては申し訳ないので。……シャワーをお借りします」
「はぁ」
背中を見送りながら、これだけ図々しいことしておいて何を今更……とも思った。
しかし、そのお気遣いには甘えておこう。正直、寝そべってゆっくり休みたいくらいには疲れている。
大きなため息をついて、櫻井は布団に倒れた。浴室からはシャワーが撥ねる音が聞こえてくる……
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