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本音 -2-
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前島からの着信を受けた携帯電話、それは黒宮の寝室にあるクローゼットの中、そこにある櫻井の背広のポケットの中で震えていた。
微睡みの中にいた櫻井の耳にもその音は届き、彼は重い瞼を開いた。
「………………」
柔らかな陽射し、柔らかなベッド、そして柔らかな、黒宮の寝顔。
「……マジかよ!?」
櫻井の頭では昨日の記憶が蘇っていたが、彼が叫んだのは別の理由からであった。
この陽の昇り方は、確実に寝坊だ。
携帯を取ろうと飛び起きた瞬間であった。
「あっ!」
ピンっと片腕が後ろに引っ張られ、勢い櫻井はベッドに尻餅を付いた。確認するまでもない、引っ張ってきたのは黒宮だ。
「ちょっと……離してください」
「やだ」
櫻井は後ろを振り向いた。黒宮が眠たげな瞳で櫻井を見つめている。
「もうだいぶ寝坊しててやばいんですから!」
「寝坊したなら休めばいいじゃん……」
「ふざけないでくださいっ……!」
平然と、気の抜けたあくび混じりに言われたのが癪に障り、櫻井も少々荒々しく腕を振り払った。
「だから、もう昨日のうちにお前は休みってことになってんの」
「……え?」
クローゼットを開けようとしたときにその言葉が飛んできて、櫻井は動きを止めた。
そのタイミングで携帯電話のバイブ音が聞こえなくなった。
「大丈夫、社長は武上のこと気に入ってるし、あいつならうまく言いくるめてくれるよ」
黒宮はのんびり起き上がり、全裸のまま立ち尽くす櫻井の肩をポンと叩いた。
「だからお前は一日ここにいればいい」
「……社長に、言ったんですか?」
黒宮の言葉に返事をする代わりに、櫻井は問いかけた。
黒宮の目に映る彼の瞳は、滑稽なほどに見開かれていた。怒りも焦りも失望も、どこに着地して良いのか分からないように顔の筋肉はせわしなく動いている。
あまり良くない。黒宮は少々不服だった。
期待したよりもリアクションが大袈裟だし、思っていたよりも繊細な男なのかもしれない。
「さぁ、武上がどういう言い方したかは知らないけど」
「でもっ!それじゃどの道バレてるじゃないですか!何でそんなこと勝手に……」
「武上の言う限りだと、お前が俺に接触してたのは既に社長も知ってたみたいだけど?」
「……違う、そうじゃないんですが……いや、もういいです」
どんな説明をしたかは分からないが、社長の忠告から真逆に動いたことがバレてしまったはず。それが木田と前島にどんな悪影響として返ってくるか、そのことで頭はいっぱいになった。
「そう、別にどうだっていいじゃん、そんなこと」
黒宮に手を引かれ、櫻井はベッドに戻された。
「昨日の続きだ、櫻井」
「いや、申し訳ないですが……」
櫻井は立ち上がろうとしたが、また腕を黒宮に掴まれる。
「……仕事に行かせてください」
瞳では睨みつけながら、懇願するような声色で櫻井は訴えた。
早めに行動しておかないと、何がどうなるか分からない。何より、仕事をサボって男と遊ぶなんて、自分自身が到底許せなかった。
一方、その言葉を聞いた黒宮の眉は、不快そうに形を歪めた。
「櫻井くん」
櫻井の胸に黒宮の手が置かれ、体をゆっくりとベッド側に倒される。櫻井は抵抗しかけたが、黒宮の表情を見てそれを留めた。
何やらただならぬ予感、それも嫌な予感がする。
「そろそろ腹を割って話そうか?」
完全に背中をシーツに横たえた櫻井を見下ろし、黒宮はそう宣言した。
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