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本音 -8-
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『櫻井さん?どうした、起きれるくらいにはなったか?』
「なんとかな……本当に悪かった、連絡入れられなくて」
シャワーを浴びて黒宮を待つ間、櫻井はベランダで前島に連絡を入れていた。電話をするのに外に出ようと思ったらそこに閉めだされたのだ。
家の外へ出ることが許されないのは軟禁のようなものだろうと思ったが、それを言うのも今更だと思って、櫻井は素直に従った。
「そっちは大丈夫か?」
『まー普通にやってるよ、あんたに話付けてほしいところは後回しで……ん?あぁ、おう……木田が代われってさ』
「おぉ、そうか」
『……お前さ、電話入れるヒマあんなら、もっと休めよ』
「……は?」
名乗りもせずに唐突にこの発言。木田のそういうところには慣れたつもりだったが、今回はまた随分と突飛なことを言ってくれた。
『んな、体壊すくらいならよ、もっとサボっていいんだよ。お前は』
「何言ってんだバカ、俺がいないでお前らがまとまるかなんて、せいぜい1日が限度だろ」
『まと……いや、まとまるよ』
「既に怪しいじゃねえか。たっぷり寝てだいぶ楽になったし、明日には行くよ」
『大丈夫だっつの。だから、明日もだるけりゃ、無理すんな』
「お気遣いどーも。なんか連絡することあるか?」
『連絡?連絡すること……前島は無いって言ってる』
「じゃあ大丈夫だな」
『うん。じゃあ、寝てろよ』
「あぁ……ごめんな、今日は」
『いーよ』
最後の木田の声は不貞腐れていたが、あれは照れている。その姿を想像して、櫻井は1人で苦笑しながら青空を見上げた。
もう陽もだいぶ昇って、空の色も濃くなっていた。
目を潰されそうなほど鮮やかな群青に眩んでいると、現実が自分の元に返ってきて、櫻井はフェンスに項垂れた。
「俺がなに心配掛けさせてんだよ……」
pmpの2人に少しでも心労を掛けるのは、櫻井にとって大きな失態のうちに入った。
櫻井の望みは、彼らが思い煩うことなく音楽を続けること。その環境を作ることを、自分の使命と自負していた。
例え今よりブレイクするチャンスがあったとしても、それで彼らの環境や関係が悪くなるくらいなら、そんな機会なんて捨て置くくらいの気持ちはある。
自分が2人に悪影響を及ぼすなんて、本末転倒だ。
さすがに黒宮本人と対峙となると、どんどんペースが狂わされる。完全に我を忘れて、快楽に身を任せていた己の姿を思い返すと、衝撃と失望が大きい。
そもそも、今の段階で自分の目的を話してしまったことだって、仕事をサボりっぱなしにしたことだって、完全に相手のペースに飲まれてしでかした失敗だ。
ハマってはいけない、飲まれてはいけない、目的を思い出さなければいけない。
何より、彼らを自分のために思い煩わせてはいけない。
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