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解放 -9-
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囁かれた言葉に櫻井は抵抗の術も、ここが仕事場であることすらも、一瞬忘れた。武上に放されると、櫻井は真っ青な顔をしてヨロヨロと後ろに下がった。
「あいつらが信じる信じないじゃない……どれだけあいつらが揺さぶられるかだ」
武上はその言葉と共に表情を消した。
普段の仏頂面よりずっと鋭く、ずっと冷たい。氷柱に貫かれるかのように、櫻井の身体は凍り付いた。
「簡単だなぁ?お前の希望も人生もぶち壊すのは」
櫻井は弱々しく首を振って、ただ「だめだ、やめてくれ……」と悲痛な声をあげるしかなかった。
「……と、いうわけだ!」
また一瞬で顔を明るくさせて、武上は櫻井の肩をポンと叩いた。
「イヤならいいよ、代わりにあいつらに会いに行くから。なんならあいつらのことも喰ったっていいしな!俺は興味の無い男でもその気になれば勃っちゃうからさ」
ハッハッハッハと笑い声を上げて、武上は悠然と出口の方へと歩いていった。
櫻井はそれから一分は、その場から動けず立ち尽くしていた。
仕事に戻らなければ。
硬直した頭もやっとほぐれて撮影スタジオに戻った時には、前島が1人で撮影をしていた。
木田は端にある椅子に腰掛けて、大胆にもビールを飲みながらだらけていた。
「なんかあった?」
櫻井が近づいてくるのを見ると、缶ビールを床に置いて腕を組んだ。
「……社長に電話してた。今日もお前ら送ってから、少し事務所に寄るよ」
「ふーん」
木田は2,3度頷くと、缶を空にするように天井に掲げ飲み干して、フーとため息を吐いた。
「今日はボケーっとしてんな」
「うるせえな。昨日のあの後なんだから勘弁してくれよ」
撮影照明の陰になる場所で、2人は小さな声で話し合った。
「でも、そんな悲しくねぇだろ」
「なんだそれ」
「安心したってことだよ」
「そうかよ」
櫻井はしばらく木田の隣に立っていたが、その隣に尻を浮かしてしゃがみこんだ。
「本当にごめんな、ここしばらく心配かけっぱなしでさ」
「だから、たまにはいいっての」
木田の言葉に、櫻井は少しだけ頬を緩ませて、小さく頷いた。
前島の撮影が終わったようだ。櫻井はポンと膝を叩いて立ち上がると、タオルを1つ取って前島の元に歩み寄っていった。
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