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接触 -4-(自慰)
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車は駐車場の端に止められ、その先に白と赤の高級外車が2台停められている。その場所と向かい合わせになって、同じ台数を止められるだけのスペースがある。
一台分のガレージではなく、この大きさの駐車場を作れるほどの財力の出所に思いを巡らせながら、櫻井は黒宮の後についた。
店を出た時とは違い、櫻井は黒宮と武上に挟まれるようにして歩いていて、連行されるような気分を強くさせた。
給湯室での一件から察してはいたが、櫻井の背後に位置する武上、示し合わせる様子もなくこの場へと櫻井を連れてきたこの男も、ミュージシャンとマネージャー以上の関係であるのだろう。
「どうぞ入って」
「……お邪魔します」
不本意ではあるが、櫻井は礼儀として一礼してから敷居を跨ぐ。3人が充分入れる広さの玄関の先は階段になっていた。
黒宮が先を行き、櫻井は少し距離をあけて登ったが、武上が自分の後ろにぴったりくっついてきているのは、振り返らずとも体温と影で伝わった。
上がった先にも玄関があった。地上からの来客用なのだろう。
そこから伸びる廊下の先、扉を開けたすぐ先はリビングになっている。床は黒いタイル張り、家具もすべてモノトーンで統一され、見えるものから雰囲気まで、やたらと丸みやあたたかみの無い部屋だった。
「酒でも飲む?」
「いえ……お構いなく」
カウンターキッチンの方へ歩きかけた黒宮に丁重に断りを入れた。
「じゃあ、早速だけど」
黒宮は室内型アトラクションの添乗員のように、大げさな素振りで次の扉を開いた。
次の部屋のフローリングにも、やたらと色の暗い木材が使用されていた。
家具も相変わらず温かみがなく、ベッドにサイドテーブルと照明、テレビボートにテレビ、それに端にはパソコンデスク。あまり無駄なインテリアのない寝室であった。光度を落とした照明だけがその無機質な部屋に、赤みを帯びた色を落としている。
黒宮はベッドにぴょんと飛び乗り、そこに胡坐をかいた。櫻井は入り口からちょっと進んだところで立ち止まる。後から入ってきた武上が扉を閉めた。
「今の気分はどう?」
「してやられたという気分です、完全に」
櫻井は敢えてウンザリしたように言ったが、黒宮はそれで面白そうだった。
「さて、じゃあそんな気分でオナニーできるのか、見せてもらおうかな」
「構いませんが……」
「じゃあ手始めに全部脱いでもらうか」
「はあ」
そうした命令を出されることに特に驚きはなかったので、櫻井はすぐにネクタイを外しだした。
床に置こうとしたところで左側から武上の手が伸びてくる。
「どうも」
ネクタイを武上に渡した時に、その背後が鏡張りになっていたことに気付いた。武上は鏡に付いた取っ手を引き、観音開きに開いたクローゼットからハンガーを出してネクタイをかけていった。
櫻井はスーツの上下を脱いで同様に武上に渡した。スーツセットの揃ったハンガーは壁の長押にかけられた。
ワイシャツにボクサーパンツ、黒い靴下という出で立ちになったが、特に躊躇うわけでもなくワイシャツを脱ぎだす。
武上は別のハンガーを出してワイシャツをかけ、肌着にもまた別のものを、そしてボクサーパンツと靴下はまとめて一つにかけられた。
こうして櫻井は、2人の前に全裸で立たされる形となった。黒宮は上から下まで見下ろして、更には背後にある鏡で後ろ姿も確認しているようであった。
「本当に恥ずかしくないんだ」
「……特にどうも思いませんよ」
いちいち確認されることに、櫻井はいい加減暗い気持ちを抱き始めた。
自分でも異常なことをしているのは分かっているが、黒宮はそんな自分を面白がっている。だから抵抗はしないのだ。
しかし、こうやって裸になって見世物にされていても、どこか他人事のように感じている。
そんな自分を自覚しながらも、その異常さを指摘されるのは櫻井にとって面白くなかった。
「じゃあオナニーして」
「立ったままですか?」
「それは嫌か?」
「あぁ特には。じゃあ、失礼します」
疲れそうだなと思いながらも、櫻井は普段通りの形をしたままのペニスを握った。半ば強制とはいえ、こうして自慰をするのも随分久しぶりだと考えた。
亀頭を親指と人差し指でぐりぐりといじっていると、じんわりと芯が熱くなって手の中で膨らみ始める。黒宮のくくっという笑い声が聞こえた。
「ほんっとうに抵抗ないんだねぇ、いちいち驚くわ」
「……早く済ませたい気持ちもあります」
櫻井は言葉どおり、すぐに射精することだけを目的にツボを重点的に攻めて扱いていた。
しかしさすがに、見られながらの自慰には居心地の悪さを感じていた。加えて姿勢も適していない、高まりはしてきたが足を支える方にも意識が注がれて、集中が出来ない。
「ねぇ櫻井さん、そのままケツの方もいじれない?」
「ケ、ケツ?」
「大丈夫、後ろの鏡で見てるよ」
それを大丈夫というのかは分からないが、櫻井は一応言われるがままに肛門の方に空いてる手を伸ばしてみた。
皺をそろそろ撫でてはみるが、慣れないむず痒さだ。
指を当ててみても、固くすぼまったそこに何か入る気はとてもしない。
「こっちは、ちょっと度胸が……」
「へーぇ」
黒宮はなぜかますます嬉しそうだった。
「なんでそっちはダメなの?」
「えーと……入る気がしないし、気持ちいいというわけでもないし……」
「無理やり突っ込んでみりゃいいじゃん」
「……それはちょっと、痛そうです」
黒宮は鼻で笑いながら小さくうなずいた。
「分かった、じゃあ乳首いじって」
「はぁ」
注文の多さに呆れながらも、肛門を撫でていた指を乳首の方に回した。そこをいじる趣味も持ち合わせていない櫻井には、むしろ集中力の邪魔になる刺激であったが、肛門をいじっているよりは楽だった。
なるべくペニスに感じる刺激に意識を注ぎながら、直立の姿勢のままで乳首とペニスを同時にいじる。
黒宮の意図は分からないでもない、人が他人に痴態を強制させるというのは、その相手に対して優越感を感じるものであろう。
人前で裸になって自慰をする行為がどれほど無様であるかについても、理解はある。居心地の悪さと、何をやっているのかという虚しい気分もある。
それでも櫻井自身は、今の状況に羞恥や屈辱を感じられなかった。
櫻井の頭にある考えは一つだった。黒宮は楽しんでいるか、自分に対する好感はどうか。
それは今のところどちらも良好でありそうだ、それなら今この手を止める理由は無い。むしろ急にやめた方が意表を突けて面白がられるだろうか。
櫻井は自慰を続行した。そちらの方が安全な選択肢だと思えたし、何よりそろそろ絶頂が近かった。
息も上がってきているし、手の動きに合わせて不安定な体が揺れる。スパートをかければすぐにイケるだろう。
しかし、どうしても一つの不安要素が頭に引っ掛かった。
「黒宮さん……」
「んー」
「このままだと、部屋を汚しますっ……」
前屈みになりながら声を掠らせても、櫻井は健気に乳首への愛撫も続けていた。
「だよねぇ。武上」
「はい」
黒宮が名を呼ぶところから武上が動き出すところまで、実に自然な流れだった。
分かり切っていた、というよりは慣れ切った動作、というのが櫻井が受けた印象であった。
ずっと櫻井の斜め後ろにいた武上が背中に回り、後ろから櫻井の股間に両手を伸ばす。
左手にはいつの間に用意したのか、丸めたティッシュが握られていて亀頭が包まれる。右手は櫻井の手を退けて、代わりに激しくペニスを上下に扱いた。
「あっ……!」
櫻井は腰を震わせた。柔らかいティッシュに精液が染みこんでいく。久々の射精は量が特別多いわけではなかったが、色は濃かった。
「あっ……」
櫻井が声をあげたのは、ピュッと飛んだ精液が武上の手にかかってしまったためだ。
「すみません……」
「お構いなく」
振り向いて謝ったが、武上は顔色一つ変えていなかった。人のことを言えた義理はないが、この男も人としての尊厳を持ち合わせていないのだろうか。
そして黒宮は本当に何のお構いもないようで、パン、パン、パン、パンと間の空いた拍手を櫻井に送った。
「おみごと。最後まで乳首はいじったまんまだったけど、好きなの?」
「いや、あまり……」
予想するより脱力感は大きかった、久々だからか仕事の疲労か、それともレストランで飲んだ酒もあるのか。
「いやぁ、本当お前バカだよね。面白いわ」
黒宮はベッドから降りると櫻井の前にしゃがみこみ、へたれ込んできたペニスと向かい合った。
「今日最後の質問」
武上の左手は櫻井のペニスを包んだままになっている。黒宮はその手を、汚れた部分を触らないようにしながら掴むと立ち上がった。
「これからも、君がどこまでできるのか試してみてもいい?」
その手は櫻井の顔の前に持って来られると、質問への返答も済んでいない口にゆっくり運ばれた。生臭い体液の匂いが空気に乗って櫻井の鼻に伝わった。
臭い。でもただ、それだけ。
櫻井は、抵抗しなかった。自分の精液にまみれたティッシュが唇に付くと、そのまま武上の掌で口を押さえつけられた。吸水性の良い紙が口腔に張り付いた。
変な味、口の中が乾く、ところどころ粘着く。それだけ。
櫻井は黒宮を見ていた。彼の瞳は驚きに見開かれ、口の端が左右に伸びていくのも抑えられないようだった。
黒宮が武上の手を離すと、武上の手もゆっくりと下りる。
櫻井はティッシュを口の中で転がして全体を湿らせると、舌を使ってぎゅっと小さく丸める。精液は溢れだし口全体に広がった。口の中のものを一息に飲みつくすように、ごっくんと喉に流し込む。
ひどく白けた気持ちと共にハァー……とゆっくり息を吐き、櫻井は黒宮に向き直った。
「あなたが面白がる目的だけであれば、構いませんよ」
黒宮の笑顔は、遊び場での自由行動を許された子どものように輝いた。
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