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開発
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携帯からけたたましいアラーム音が響くまで、櫻井は夢さえ見ずに熟睡していた。
外出があった分睡眠時間は普段より短かったが、さっぱりした目覚めだった。
それだと言うのに、アラームを止めて携帯を見た瞬間、晴れやかな朝に似つかわしくない文面が、櫻井の携帯には映し出されている。
『性感帯開発について』
送信者は武上征爾であった。
メールを開封して送信された時間を見ると、届いたのは櫻井が昨日眠りに就いた後、深夜の時間帯である。
なるほど武上に罪はないと、櫻井は自分を納得させて本文を読んだ。
『黒宮から貴方の体、特に乳首や肛門を性感帯として開発するよう言い渡されました。
都合が良ければ今夜より始めたいと考えていますが、いかがでしょうか。』
彼の音声でそのまま再生できそうな文面だ。
いかが……と言われても、いかんともしがたい。
しかも「言い渡された」という言い方が気になる。まさかこのセクハラの実行者は武上になるのか?昨夜のように、黒宮はただ見物するだけか?
『構いませんが、明日も仕事があるので早い時間だと助かります。また黒宮さんのお宅に伺えばよろしいでしょうか。』
携帯を気にしながら支度を済ませようと思っていたら、5分としないうちにメールの受信音が鳴った。昨日あのメールを送った時間帯に起きていて、今もう起きているのか?
『希望の時間帯で行います。私がそちらのお宅に向かう予定でいますが、都合が悪ければ場所を変えます。構わないでしょうか。』
櫻井もこの返事には目を丸くした。
武上が実行者なのは確かなようだし、この様子だと黒宮はこちらに来そうにない。遊ばれてるのは最初からだが、こうなると黒宮の自分に対する興味の度合を測りかねる。
少なくとも使いを出す程度にはまだ関心があるようだが、その関心を持続させるために、自分はどんな態度を取るべきだろうか。
櫻井はいつもより急いで支度をしながらも、どのようなスタンスでもって返信をするか考えた。
態度を決定したのは、車に乗り込んだときだ。
『了解しました、20:00には家にいる予定です。お待ちしております』
それが武上に返した文面だ。
黒宮の関心を繋ぐために、櫻井は今まで通りの態度が最善であると判断した。
断るほどのことではない、だから断らない。
携帯を鞄にしまうと、櫻井は前島を迎えに発車した。今日、木田は室井と一緒に彼のマネージャーの玉谷に乗せられて来る予定だ。
道中、櫻井は武上が最初によこしたメールの意味を考えていた。
わざわざケツを慣らしにくるというのであれば、その先の目的はおおよそ見当はつく。しかし黒宮が動かないとなる以上、今日だけ遊ばれてそれでおしまいという可能性だって、充分にある。
今日はどのみち武上に対してパフォーマンスをするしかない。やはり自分が直接出向きたいと黒宮に思わせるために、どの選択肢を取ればいいか……
櫻井が思案を巡らせるのは、前島の住むアパートに着くまでだった。
着
いてすぐに前島の携帯に電話をかけて呼び出し、のんびりと前島が建物から出てくるときには、何食わぬ顔でいつものように前島を迎えた。
黒宮たちとのことは、前島にも木田にも漏れてはいけない。
特に前島は、決して室井と木田の関係を快く思っているわけではない。
口では他人の色恋沙汰がどうだろうと知ったことではないと言っているが、室井と木田が揃う場で前島が神経質になるのは確かだ。
5年近くも同じ部屋で暮らした仕事のパートナーが、同性愛者となったのだから、無理もない。そこは綺麗ごとばかりで済ませることもできないのだ。
それに加えてマネージャーまでもが男とどうこうしていると知れば、彼のストレスは計り知れない。最悪この3人で仕事が出来なくなる可能性もある。そうなったら本末転倒だ。
木田は自分の立場がある以上、まだ理解は持ってもらえるかもしれない。しかし彼はまず隠し事のできない男だ。木田にばれるということは前島にばれることとイコールで考えた方がいい。
pmpを守ること。それが自分の最大の使命であり、唯一の願いだ。
車に乗ってすぐに寝ついた前島をルームミラー越しに見ながら、櫻井はまた今夜の振る舞いについて考え出した。
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