アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
夢…?
-
『――円(まどか)。洋一君の手を離しなさい。』
『…やだ。』
―――ああ…コレは…“あの時”の…
微睡む意識の中で…
洋一の目の前には2人の少年と
その少年たちの前に立ちはだかる複数の大人たちの姿が見え…
『…円。』
『嫌だっ!』
変声期もまだ迎えていない甲高い少年の声が辺りに響き渡り
対峙している大人たちの間に緊張が走る…
『円……我儘を言ってないで…我々と一緒に来るんだ。さあ――』
『けど…っ、御爺さま…っ!』
銀色の髪に銀色の瞳をした美しい少年は
隣に立つ黒髪に黒い瞳からポロポロと涙を流し…
声も無く泣き続ける少年の手を強く握りしめたまま
少し離れた黒塗りの車の前で佇(たたず)む初老の男性に向かって
何かを言いかけるが――
初老の男性がソレに耳を貸すことは無く…
静かに片手を挙げ、周りの人間に合図を出すと
互いに手を握り合う2人の少年の周りを
黒いスーツを着た複数の大人達が緊張した面持ちで取り囲み始め…
『嫌だ……嫌だよ…!僕はようちゃんと…
ようちゃんと一緒じゃなきゃ何処にもいかない…っ!
…ッね?ようちゃんだって僕と一緒にいたいよね?ね?…ね??』
『ぁ…、ッッ、ぁぁ…、』
銀髪の少年が黒髪の少年の顔を覗き込みながら必死に同意を促すが――
黒髪の少年の口からは言葉にならない小さな呻き声が漏れ出るのみで…
―――そう…この時の俺は――“僕”は……
“彼”に『喋るな。』と言われ…
自分達の周りを取り囲む大人達が怖くて…
本当は泣き叫びたくて仕方なかったにも関わらず――
僕は声を発する事も出来ずに
ただただ涙を流しながら黙ってこの光景を見ている事しかできなくて――
『ああ…そんな怯えた顔をしないでようちゃん…大丈夫だから…
きっと僕が何とかするから…!』
―――“彼”が怯える僕の後頭部に片手を回し…
グッと僕の顔を自分の方に引き寄せ、互いのおでこがコツンとぶつかった時に
“彼”が小声で僕に“何か”を言ったんだ…
“何を”言ったのかまでは覚えてない…
けど――
彼が僕に“何かを言った”のだけは覚えてる…
そしてこの後――
『――仕方ない…少々強引だが――彼等を引き離せ。』
『分かりました。』
―――ッ、ああそうだ……そうだった……忘れてた。
………ん…?いや違うな。
“忘れてた”んじゃない。
“封印されてた”んだ……この部分…
“僕が僕じゃなくなる時”に
“先生”が僕にお注射をしながらこう言ったんだ。
『円に関する事は忘れなさい。』って…
だから僕は――
『円坊ちゃん……さあコチラへ――』
インカムを着けた黒スーツの男性が
おでこをくっつけあっている少年2人にその手を伸ばしたその時
銀髪の少年の瞳がギロ…っとスーツの男性に向けられ――
『――“僕たちに…触るな”…っ!』
『――ッ!?!?』
銀髪の少年のその一言で、黒スーツの男性の動きがビキッと…
まるでゼンマイの切れたオモチャみたいに手を伸ばした姿勢で固まり…
そして銀髪の少年がその男性に向け
冷たい銀色の瞳で睨みつけながら口を開いた…
『“その汚い手で”――』
―――ああ…でも…
『“自分の首を”――』
『円っ!止めなさいっ!!』
初老の男性が焦った様子で叫ぶが――
銀髪の少年はそれを無視して言葉を続け…
『“骨が折れるまで締め上げろ”。』
『円っ!!!』
『ッ!?グッ…が…、がはッ、ぁ…あ”が…あ”ああ”…ッ、』
「…ッ、」
―――またこの場面を思い出すくらいなら…
“封印されたままの方が良かった”かもな…
銀髪の少年にそう“命令”された男性はギリギリと自分の首を締め上げ…
シン…と静まり返った辺りには男性の苦し気な呻き声と
自らの首を絞めるミシミシという嫌な音だけが妙に大きく響いて――
『円っ!止めさせなさいっ!!おい誰かっ!首を絞めている彼を止めろっ!!』
『――ッ!オイ止めるんだっ!』
『意識をしっかり保てっ!』
初老の男性の言葉に
2人の男性がハッとして自分の首を絞め上げている男性に駆け寄るが――
『が…ぁがあ”…ゴハッ、ぁ”…が、あ”あ”あ”あ”…っ、』
ボキッ…
――――ッ…、
自分の首を絞めていた男性が一際大きな断末魔を上げると
辺りに鈍い“何か”が折れる音が響き渡り…
立ったまま自分の首を締め上げていた男性は
糸の切れた人形のようにその場に頽(くずお)れ…
『…ね?今の見たでしょ…?
僕の要求を飲まなきゃ……他の人達も“こうなる”よ…?御爺さま…』
銀髪の少年はそのあどけない顔からは想像出来ない程に
美しくも悍ましい笑みを浮かべる…
すると初老の男性は苦渋の表情を浮かべ…
“ある物”をコートのポケットから取り出すと――
それを感慨深げに眺め…
『…まだ試作段階の“コレ”を――
何も知らない洋一君に使うのは忍びないが…』
初老の男性が先程取り出した銃のようなモノを黒髪の少年に向けると
銀髪の少年から笑みが消え…
『ッ!?それは…っ!』
『キミのその匂いが“αとしての能力を倍増”させるというのなら…
その逆もまたあり得るという事…
円の暴走を止める為だ…許せ…』
『ッ、やめ…っ!』
バシュッ
※ ※ ※
「ッは…!」
洋一がハッとベッドの上で目を覚ますと――
凄い勢いでベッドから飛び起き…
「ッ…ハァ……ハァ…、」
―――ッ……ゆめ…?
洋一が両手で顔を覆いながら荒い呼吸を繰り返す…
―――……アレ…?けど夢って……一体何の夢を見たんだっけ…?
ッ駄目だ……全然思い出せない…
けどすっごく嫌な思いをしたのだけは覚えてる…
洋一が汗で張り付いた前髪を掻き分けながらふと
最初からこの部屋に掛けられていた洗練されたデザインの壁掛け時計に目をやると
時刻は4時を指していて…
―――朝4時って…マジか…
ハァ~…と項垂れながら洋一は息を吐きだすと、意を決してベッドから降り…
「とりあえず…シャワーでも浴びて来よ……寝汗酷い…」
そう呟くと洋一は少しフラつきながらその場から歩きだし…
シャワーを浴びる為に部屋を後にした
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
47 / 50