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後悔
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3年前
「つ、たすけて…」
「どうしたんだ?何かあったのか?!」
電話越しに啜り泣く声が聞こえた
「おねが、いっ…!たすけ、て…」
声が次第に薄れ風の吹く音しか聞こえなくなった
俺は急いで彼の家に向かった
そう遠くはなく数十分も経たない内に辿り着いた
家の電気は付いているが電話から聞こえる音を聞くと家の中にはいない
必死に探してようやく見つけた時彼は河川敷にいた
小さく丸まってうつ伏していた
「なんでこんなとこいんだよ、なあ起きろって」
触れた体は氷のように冷たかった
焦った俺は彼を抱き抱えて家まで走った
まだ寒いとは言えない季節にストーブと湯たんぽを準備して震える彼を温めた
汗をかく程その部屋は暑かったと思う
「…!いやだ!!!やめろっ゛!!!」
日が昇り出した頃彼の叫び声で目を覚ました
なにかに怯えた様に布団にくるまり体を震わせていた
「どうした、」
「やめてっ…くださぃ、」
「なあ、大丈夫だから。俺を見ろ」
優しく抱きしめてもあいつの震えは止まらなかった
「う…っ、」
「大丈夫。俺が傍にいるから、何も怖くない」
「う…んっ」
たまたま傍に置いてあった熊のぬいぐるみを彼の前に出して落ち着くように抱きしめた
暫くすると彼の震えは止まり涙を浮かべながら黙り込んだ
理由を聞いても中々答えてくれない彼に半心嫌気がさした
「俺これから用事あるから、落ち着いたら家帰れよ」
「…ぇ」
「鍵ここ置いとくから帰る時ポスト入れといて」
「や、だ…」
「あ?」
「行かないで…おねがいっ、します…」
しょうがなかった
こんなに頼られたら行くに行けないし
仕方なくその日は予定を潰して彼と一緒にいた
昼が過ぎてご飯を食べた後彼はまた眠りについた
痩せ過ぎた身体が見ていて痛々しい
こんなにも誰かを考えるのが辛いとは思わなかった
夕時になり一人暮らしの俺は台所でご飯を作っていた
食材を切る音と共に何か音がしていることに気が付いた
散々探してみたものの台所の音では無かった
耳を凝らすとどうやら彼のいる部屋からしているらしい
嫌な予感がして急いで部屋に入ると部屋の隅で泣きながら自分の腕を掻き切っている彼がいた
「な、にしてんだよ…!!」
「ごめっ、なさい…」
「それやめろ!血出てんじゃねぇかよ!」
「う゛っ…」
昔からしていた行為なのか血が出ている腕は黒く変色していた
傷口を丁寧に手当をし涙で腫れた目をホットタオルで温めた
「大丈夫だからもう何も考えんな」
「っ、」
大丈夫、大丈夫
俺は何回その言葉を繰り返しただろうか
落ち着いた彼に温かいスープを飲ませると安心したのか昨日の出来事を話し始めた
「おれ…ね、
ち、ち親に…」
「お…か…されて、て…」
「もっ…げん…かぃ……だった、」
「からだ…、きもちわるっ……くて、
かわ…はがした…かった、」
絶句した
いつも元気で
明るくて
優しくて
ずっと笑ってるこいつがこんなに苦しんでいたなんて1つも想像出来なかった
今までどれだけ必死に笑っていたのか気付いた時、胸が張り裂けそうで堪らなかった
かける言葉が見つからなかった
『大丈夫』
その言葉がいかに的外れだったか
過去の自分が恥ずかしくなった
その日は同じ部屋で寝た
いつまた苦しみ出すか考えていると眠れなかった
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