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黒い傘 5
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「しばらくは降水確率ゼロパーなのに、今日も傘を持ってるんだね?」
やっと静かになったと思ったのに、まだいた。お前は現場に行かなくていいのかよ?腰抜けの同僚。
「あ、こんにちは腰抜けさん。この傘は日傘兼用なんです。僕、あんまり焼けたくないんで。それに、護身用です。こうやってっ……振り回せば、襲われても撃退できますから」
「うわっ!?ちょっ……い、いきなりはやめてね、ビックリするから。それに『腰抜けさん』って、課長のマネしなくても……」
5年前、俺と一緒にミナギと出会った現場に来ていた腰抜けの同僚。こいつ、上司からの圧力じゃなくて本当にミナギのことを覚えていないらしい。
腰抜けの上にアホだった。だから今でも「腰抜け」と呼んでやっている。そしたらミナギも「腰抜けさん」と呼ぶようになってしまってな。
どんな時でも必ず手に持っている黒い傘に触れようとした腰抜けの同僚に、ミナギは素早く黒い傘を振り下ろした。
仕事の時の目だ。それに、怒っているな。わずかに感じる抑えられた怒気と鋭い視線。それから耳スレスレでピタリと止まった黒い傘に、すっかり怯えて腰を抜かしてしまった腰抜けの同僚。
それだからお前はいつまでたっても「腰抜けの同僚」なんだよ。って言ってやったら生意気に睨んできやがって、それを見たミナギが笑う。
傘を下ろして、全身の力を抜いていつものミナギ。その傘、大事なものだもんな?
一緒に暮らし始めて3年目くらいでやっと話してくれた。前の飼い主にもらった黒い傘。深い思い入れがあり、ミナギの宝物で大事な、武器。
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