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番犬 4
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「キツめの麻酔薬。ゾウでも数時間は起きない。ハハッ……藤代さん、強いじゃん。格好よかった、よ……っ」
「ミナギっ!お前、骨が折れているじゃないか!足も深く抉れて……。待ってろ、すぐ病院に――」
「だめ。病院は、僕、だめだから。自然治癒で、なんとかなるよ。いつもそうだったしさ。大丈夫大丈夫。アハハッ。藤代さんこそ、血が……」
完全に動かなくなった殺し屋の様子を確認して立ち上がり、振り返ったミナギは微笑む。静かに猛る殺意は消えた。
戦い慣れているミナギがボロボロになって倒れるほど強かったはずなのに。グラリと傾いた体を抱き留めれば、力なく笑う。
軽い。額に玉のような汗をいくつも浮かべているくせに、顔に張り付けられた笑みは薄っぺら。それ、いつまでもつんだろうな?
ミナギはこの世に存在しない。保険がきかない以前に、病院で治療を受けられない。
痛感する、ミナギが警察の犬であることを。もどかしい。笑うな。お前は、笑うな。腹が立つから。
もういいだろ。5年も経ったんだ、ミナギが本当の自分をさらけ出すにはちょうどいい機会だ。俺が手助けしてやるから。
俺も、お前に本当の俺をさらけ出すから。だから、俺とちゃんと、向き合え。
斬られた俺の右腕に伸ばされたミナギの手を、つかんだ。引き寄せ抱きしめる。きつく、きつく、ミナギの背中が仰け反るほど強く。
「あ、はっ……いた、いよ。お、怒ってんの?どうして、っ…………ねぇ……何で、泣いてるの?」
「お前が笑うからだ。痛いくせに、辛いくせに、苦しいくせに、怖かったくせに、笑うな。泣け」
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