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あの後、踊りながら時々口づけをしたりと戯れていたが、トシに目撃され、「はしたのう御座いますよ!」と二人で叱られた。
風呂に入り寝所に行くと那由多は私のベッドに潜り込んでおり、「温めておきました」と笑うている。隣に入り小さなその身を抱え込むと、ふと一年前に佐之助に言われた言葉を思い出した。
【...っ、大切にしてやって下さいっ、笑んでっ、
居られる様にしてやって下さいっ、...っ、】
那由多を思う切なる願いであった。嫌な役を買うてまで那由多を守る為に身を引いてくれたのに、今宵、那由多を不安にさせたであろう事を思うと佐之助には詫びの言葉もない。
...もっと努力せねばな
「......どうかなさったのですか?」
「いや、ぼんやりしただけだ。さぁ、今年ものろけてくれ、」
近衛の言うている事が分からず那由多は小首を傾げる。
何の事を仰られて居られるのかと見つめれば「此処からは私は那由多の友だ」と言われ、あぁと笑うた。
去年、唯一の友である佐之助を失った私に、情人であり、友であり、家族になろうと近衛は仰って下さった。なれど佐之助には近衛ののろけ話しを聞いて頂いていた故、嫌ですとお断りしたのだが、今年も私は近衛に御自身ののろけ話しをするのかと思えば何だか可笑しゅうて。期待に満ちている顔を見て少しの悪戯心。近衛なら笑うて許して下さるだろう。
「篤忠様は凛々しいお顔立ちで、燕尾服も良うお似合いでした。それはもう、見惚れてしまうくらいで。...なれど、お戻りになられた時のお顔は、迷い子の様に眉を下げて居られて。ふふ、私の事が心配で心配で泣き出されてしまいそうなお顔でした。あの様なお顔を拝見出来て、ふふふ、目を腫らしておいて良かったなと、」
「こら!」
「ふふふふっ、あははっ、擽っとう御座いますっ、やぁ、」
殊更に怒った顔をして擽れば、那由多は身を捩って逃げるが近衛は手を止めず擽り続けた。
余程情けない顔をしていたに違いない。那由多が笑うてくれたのならそれで良いとは思うも、気恥ずかしい故忘れて欲しいものだ。
擽るのを止めると笑い過ぎたのか、那由多は私の胸にこてっと頭を置いてはぁ、と大きく息を吐くとまた直ぐにくすくす笑い出し、「なれど...」と言葉を続けた。
「どんなお顔をなされていても、胸が高鳴り困ってしまいます、」
言うて見上げてきたその花の綻ぶ様な笑みに、近衛は思わずその顔をよくよく見ようと上体を起こした。
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