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苦しい
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「えっと…。なんで?」
意味がわからない。いや、わかるけど。
…多分、この子は空くんが好きで。
「私には、空しかいないの。ううん、空しかいらないの。…ずっと一緒だった、幼い頃から。あなたは、どう?違うでしょ?…返して」
「いや、だ」
「だってあなた…男、なんだよ?わかる?…私は、女だし、はっきり空を好きだって言える。…お願いなの…」
「いえ…ないけど、嫌…」
「私……っは!…空がいないと生きられない…っ、の……」
大きな声を突然だした沙優ちゃんが、胸を苦しそうに抑えてその場にしゃがみこんだ。
ぜえぜえ、言って見るからに苦しそうで。僕も一応男だし、真っ先におぶって保健室に向かう。…身体、弱いって言ってた。はやく、はやく、なんとかしないと…けど、なんとかって?
ど、どうしよう…頭が真っ白。
行き交う人達がこっちを見て来てなんだなんだ?と野次が飛ぶ。
…注目されるのも、なんか言われるのも、大嫌い。けど、急がないとこの子…。
向かってる途中でキョロキョロしている空くんが僕たちを見つけた。
「…雪!と、……沙優。なんで2人で…、とりあえず保健室」
と、すぐ近くにあった保健室に駆け込んだ。先生は、ちょうど職員会議に行っていて、中は空だった。沙優ちゃんは、まだぜえぜえ、と苦しそう。
「沙優、薬飲んで?」
「嫌……よ、はぁ…、はぁ…だって…空、…私のいうこと…聞いてくれな…かった。この人と、…別れ…なくて」
「ほら、水持って来たから。つべこべ言わずに飲め。持ってんだろ?」
「嫌…!…ふぅ、…だって、もう死んだ方が…まし、よ」
こんなに苦しいのに拒むのは、やっぱり空くんが好きだから、だと思う。何もできない自分がもどかしい。……別れたくない、し。
空くんは呆れ顔をして沙優ちゃんが握りしめていたペンダントを掴んで中から錠剤を出して水と一緒に自分の口に放り込んだ。
え?…ちょ、何やってるの空くん…!空くんが飲んでどうす…
そのまま沙優ちゃんに口付けて、沙優ちゃんの喉が揺れた。ゴクン、という音が聞こえた。
今、空くん…口…。
キス、した…?や、緊急事態だから、仕方ない……けど。
僕には、その"けど"が抜けなかった。
他にさ、方法なかったの?
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