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傷物の君 四
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「……喜津愛、アレは嫌いか?」
「うん。冬なら冷水を、夏なら熱いのをわざとかけられるから。……俺が泣き出すまで」
俺がシャワーを指さすと、喜津愛は下を向いた。
「……かけられるって、どこに」
「真にぃがさっき拭いたところ。あと、お尻」
驚きすぎて身体の力が抜けて、タオルが床に落ちた。
喜津愛は犯されていたのか?
母親に? 父親に?
いやもしかしたら喜津愛を犯したのは親じゃなくて、姉や兄かもしれない。
俺はただ何も言わずに喜津愛を抱きしめて背中を撫でた。
俺は同じ経験をしたことがないから、喜津愛の気持ちを推し量ることなんてできない。それなのにまるで喜津愛の気持ちがわかっているかのように辛かったなと口にしたり、大変だったなと言ったりするのだけは絶対ダメだと思った。
けれどそう思ったからって、何か他に言葉が思いつくわけでもなかった。
どうしたらいいのだろう。
抱きしめるだけじゃきっとダメだよな。でも俺はカウンセラーの仕事をしているわけでもないし、教師なわけでもないから、これ以上できることが思いつかないな……。
「真にい?」
喜津愛は不思議そうに首を傾げた。
なんで抱いてるの?と思っているのかもしれない。
俺が優しくする理由すらも、喜津愛にはわからないのか。
喜津愛の瞳からはまだ涙が流れていた。俺はしゃがみ込んで、喜津愛の涙を拭った。
「喜津愛、お前歳いくつだ?」
「十歳」
耳を疑った。
そんなに若いのに、犯されて心に傷をつけられたのか?
腹の底から沸々と怒りが湧き上がってきて、喜津愛の家族を殴りたくなった。
「真にい、血出てるよ?」
喜津愛が俺の唇を触った。喜津愛の指に血がついている。唇を噛んでいたのか。
「喜津愛、タオルをもう一枚とってくるから、風呂には一人で入れ。その方が楽だろう?」
「嫌だ。シャワー怖い。いつも、身体おかしくなる」
違うんだよ、喜津愛。
なってるんじゃない、可笑しくされているんだ。
シャワーは身体を温めてくれるものだと教えてあげたかった。でも、身体にシャワーがかかることも嫌なんじゃ、そんなの教えられないよな。
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