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傷物の君 八
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★★
目が覚めると、俺はすぐに編集長に電話をかけた。
「叶芽さん」
『ん、どうした?』
「……すみません、今日仕事休んでもいいですか」
『もしかして体調悪い?』
「……はい、すみません」
『ん。今は体調崩しやすい時期だからな。お大事になー』
電話はかなり簡潔に終わった。
仮病かどうかを疑いもしないなんて、本当に人が良いよな。まぁその分、罪悪感を感じるけど。
もうすぐで、ライターになってから一年が経つ。
ドラマや漫画ではよく編集長のことを実際に編集長と呼んでいることがあるが、うちの会社じゃあ、上司も後輩も関係なくみんな苗字にさん付けだ。そんなふうに肩書きで呼ばれるのは社長くらいしかいない。
今回は仮病だとバレなかったけど、あんまり休むとそう疑われるだろうから、明日はちゃんと会社に行こう。
喜津愛が心配で、まともに仕事ができる気がしないけど。
ああ、ダメだ。
明日のことを考えていたら、頭が痛くなってきた。
……喜津愛はやっぱり家に帰すべきなのか?
いや、それはダメだ。そんなことをしたらきっと喜津愛はまた犯される。俺がしないでくださいと言ったらしなくなるようだったら、とっくに犯されなくなっているはずだから。
「飯でも作るか」
まずは毎日きちんと食事をさせて、きちんと寝かせることから始めよう。
俺はまだ二十歳だし、喜津愛をまともに世話できる自信なんて全然ないけれど、そうしないとダメなことはわかるから。
俺は顔を洗うと、すぐにキッチンに行った。
冬だからとりあえず暖かいものを作ろう。スープはどうだろうか。
棚から鍋を出していたら、喜津愛がキッチンに入ってきた。タイミングがいいな。
「おはよう喜津愛」
「おはよ、真にぃ」
俺と目が合うと、喜津愛はすぐに俺のそばにきた。
「喜津愛、シャワーの他に嫌いな物ってあるか?」
嫌いなものがあるなら、それの味を変えて食べさせようと思った。
「……変な味のジュース」
なんのことだ?
「……父さんは、エナジードリンクとか言ってた」
十歳の子供に良かれと思って飲ませるものなのか? ……いや、子供の身体には良くないものだと思ったから飲ませたのか。
「喜津愛、それはよく飲まされたのか?」
「掛けられてた。だからいつも、俺の服と身体はジュースまみれで……」
飲まされてはいないのか。
暴力をされた跡は、目に見えるからわかりやすいけれど、喜津愛が受けたような身体に跡が残りにくいものはとてもわかり辛い。父親はそれが分かっていたから、敢えてそんな虐め方をしたのだろうか。
……もしかして、喜津愛を犯したのも父親なのか? だとしたら随分と性格が悪い父親だな。
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