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【R18】首元に噛み痕残る俺がクリスマスプレゼントの代わりに抱いて欲しいと頼んだら~キズモノオメガの幸せの見つけ方~
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四年前の春、二十五歳になったばかりの俺は、新卒で入社してきた東谷の教育係を任された。
初めての教育係で緊張していた俺だったが、東谷は教えたことを一度で覚え、新人とは思えないほど自発的に行動し、課題を発見すれば解決する仕事の出来る男だった。
そんな優秀な男の教育係を会社の花形と言われる営業部所属ではあるが、ほとんど事務担当の俺に何故任せたのかと初めは疑問だった。
だが、俺の手が塞がっている時に先輩や同僚に東谷のことを頼むと、東谷が作成していた資料が削除されたり、伝達ミスが発生するなど、東谷が起こすとは考えにくい初歩的なミスが何度も続いたことで俺は状況を理解した。
『東谷、俺……!』
『いいんです。勇利先輩は気付かないフリをしててください』
証拠は何もなかったが、ミス自体が東谷を貶めるための嫌がらせだと気付いた時、俺は怒りに任せて抗議しに行こうとすると、東谷は嬉しそうに笑いながら俺を止めた。
『俺じゃないって信じてくれてありがとうございます。でも、それだけで十分です。大丈夫、絶対あの人たちよりのし上がって、後悔させてやりますから。だから俺のこと見ててください』
結局何も出来なかった俺をよそに東谷は研修を終えて独り立ちすると、先輩たちをも圧倒する営業成績を残し、わずか一年ほどで海外支店への栄転が決まった。
栄転が決まると、まるで手の平を返したように今からコネを作っておこうと、東谷の周りにはいつも人が溢れていた。
『東谷ならやるって信じてたよ』
『東谷ってSNSとかやってる?α限定っていうのがあってさー』
東谷に群がる奴らを少し離れた場所から見つめていた俺は、あんなに東谷のことを邪険にしていたのに態度を急変させたことへの嫌悪感と、その輪に入ることさえできない疎外感を覚えた。
『絶対あの人たちよりのし上がって、後悔させてやりますから』
弱肉強食世界の縮図のようなこんな会社で、何も出来ない俺とは違い、真っ直ぐ前を向いて戦っていこうとしている東谷は羨ましくもあり、カッコいいと思った。
(必死に嘘がバレないようにしてる俺とは違う……)
平凡顔を際立たせるための黒縁眼鏡に黒髪、細身で平均身長より少し小さく、本当はΩでありながら必死にβを装っている俺は、初めからαの輪に近づくことさえできないのだ。
(東谷の目には、もう俺のことなんて……)
何かが変わって欲しいだとか、本当の自分を見て欲しいと思ったわけじゃない。
ただ最後に、東谷に俺だけを見て欲しかったんだ。
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