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平和を取り戻したラオムの国に、大聖堂の祝福の鐘が盛大に鳴り響く。
雲ひとつない晴天の下、次代のラオムを背負って立つ皇子の晴れ姿をひと目見ようと王城付近へ押し寄せきた国民たちを、純白の礼服に身を包んだショウはぼんやりと白亜の露台から見下ろす。
――こんなにも国中の人たちがエイルの結婚を祝福しているんだ。俺も、エイルのことを祝福しなくちゃ。
でも、と葛藤していたところで無遠慮に断りもなくショウの部屋へ入って来たのは、つい先日までパーティーを組んで戦ってきた赤髪の屈強な騎士レアルドだ。
「ショウ、パーティーの支度ができたみたいだぞ。我々もそろそろ広間へ顔を出していないと、宰相たちにまた嫌味言われちまうぞ」
レアルドは旅に出ていたときは伸びっぱなしの髪の毛そのままで、外見に無頓着な男であった。
しかし今日は、さすがにかしこまった場へ出席するせいか、鮮やかな短髪の赤髪は整髪料で後ろに丁寧に撫でつけられ、王族騎士団だけが着ることを許された紺地に金の縁取りがされた襟高のジャケットに、白色の下衣という軍服をきちっと纏い、見た目だけで言えば本日婚礼を迎えたラオムの皇子と同等くらいの偉丈夫に見える。
「……って、そうだった。お前はもとの世界、『ニッポン』
っていう国に戻るんだったな」
背を向けたままのショウの足元へレアルドは静かに腰かけ、露台のディフェンスに背を預けた。
「ごめん」
力なくショウは謝罪の言葉を告げる。
「なあ、俺は男同士の恋とかよくわからねぇけど、でも、お前たちふたりはあの旅で想い合ってたと思うんだよ。だから今回の皇子の婚礼も家柄のせいで仕方なく、」
誰よりも情に熱い男、レアルドの恋愛対象は女性だが、それでもショウが同性の皇子に旅の途中で恋していることに気づいてからは、茶化すどころか応援してくれる大切な仲間のひとりだった。
けれど、その大切な仲間の言葉を遮ってまでも言葉を続けようとするショウの硬い決意は、今さらなにを言われても揺らぐことはない。
「ありがとう、レアルド。でも、この先エイルの本音とは裏腹に、エイルが国にとってよき皇子でいる姿を見続けているのは辛いんだ。だからこそ、異世界からやってきた勇者としてラオムの平和を取り戻す役目を終えた以上、俺はもとの世界へ戻るのがいちばん得策だと思っているよ」
「ショウ……」
なんともいえない表情で、レアルドがショウを見上げた。
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