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マッチング
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36才ハイスぺ男性がキスマークをつけて婚活パーティーに来る理由……。パーティーが始まってからも、そのことが頭から離れなかった。
風俗の可能性もあるけど、婚活パーティーがあるのにその前に風俗に行くってどんだけ性欲旺盛な三十路だ!?と26才草食男子の俺は思ってしまうし、プロの相手じゃなかったら話は余計に厄介なことになる。そういうことをする相手がいるのに婚活してるってことは、おそらくその相手とは結婚できないような関係で、不倫とかセフレとか?恋愛経験に乏しい俺に想像できるのはそれくらい。
付き合っている相手がいて相談所に登録するのは契約違反ではないけど、真剣に結婚を考えている人達に対して不誠実だし、交際が決まったらちゃんと別れられるのか心配になる。そして、それ以上に心配なのは……。
『堤さんだったら、結婚詐欺師でも騙されてみたいわ~』
原さんが言っていた冗談が脳裏を過る。
一番最悪なのは堤さんが結婚詐欺師の場合だ。俺は一度だけ、結婚詐欺師の婚活をお手伝いしたことがある。もちろん、担当していた間は彼女が詐欺師だなんて思いもしなかった。
俺は高卒で今の会社に就職したので、年のわりに経験年数は長い。
4年前のことだ。担当の女性会員が登録して2か月ほどでスピード成婚でき、退会していったのだが、1年ほどして警察が会社に来た。なんとその後、彼女と成婚した男性は借金だったり親の病気だったりを理由にトータル400万ほど彼女に貢いだあげく、彼女と連絡が取れなくなってしまったそうなのだ。男性が警察に相談に行き、警察の調べで、会社に保管していた彼女の身分証明書などは全て偽造されたものだとわかった。
そのとき初めて、公文書を偽造する闇業者もいることを知った。結婚相談所は婚活ツールの中では結婚詐欺に逢いにくいという利点があるが、詐欺師が登録する可能性もゼロではない。
午後3時に開始されたパーティーは年齢制限なしの50人規模のもので、パーティーの間もずっと堤さんを目で追ってしまっていた。
俺達がルーレットと呼んでいる回転寿司形式の1対1面談では、女性は皆、堤さんが目の前に来ると10倍増しで目を輝かせていた。フリータイムもハーレム状態だったのは言うまでもない。女性に囲まれた堤さんは気圧されている感じで、金持ちの女性を値踏みするようなハンターの目はしていなかったように思う。
堤さんにマッチングして欲しいようなして欲しくないような。複雑な気分でパーティーのクライマックスを迎えた。
「本日は2組のカップルが誕生しました!カップルになった方は、このあとエレベーターホールでお相手の方と待ち合わせしてください。以上で今回のパーティーは終了です」
原さんが閉会のアナウンスをし、ぞろぞろと参加者が退出し始める。最後の一人を見送りホールの扉を閉めた。
参加者のスマホを使って専用のウェブサイトで集計しているため、一瞬でマッチング結果がわかる。こちらからは待ち合わせ場所だけアナウンスして、その後の連絡先交換や二次会に行くかどうかなどは各自にお任せしている感じだ。
「堤さんがマッチングしなかったって意外ね。誰を選んだんだろ」
電源を落とそうとしているPCを原さんが覗き込んでくる。
俺も気になっていたので、堤さんのページを開いてみた。彼の第一希望は、マッチングが成立した一人である岡さんだった。
岡さんは34才で職業は医師。スレンダーな体型で、身長169㎝とプロフィールには書いてあるけど、実際には身長170㎝の俺よりも少しばかり背が高そうに見えた。プロフィールの写真は中性的な顔立ちの美人。
堤さんと並んで立てば絵になる美男美女カップルだけど、堤さんが岡さんを選んだのは意外に思えた。
婚活パーティーでは男性は年の離れた年下の女性を選ぶ傾向にある。30代の男性なら20代の女性を選ぶことが多い。34才の岡さんは年の近い堤さんから自分が選ばれる可能性は低いと思って、最初から希望しなかったでのはないかと思われる。
彼女は相談所に登録してから1年近くになる。期待を裏切られることが続けば、人は臆病になる。今回マッチングした相手は40才の公務員だった。
「岡さんを選んだのは、年収が吊り合うからかな」
原さんは堤さんが岡さんを選んだ理由についてそう結論づけ、俺もちょっともやもやする気持ちに蓋をし、撤収作業を始めた。
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