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――小さい頃から見栄っ張りで全然子供らしくなかった。
だから静樹は、同級生の前では浮いていた。
仲間はずれにされてないけど、かといって放課後一緒に遊ぶような友達がいなかった。静樹は、いつも学校から帰ると一人で遊んでいた。
そんな静樹の前に突然現れた四つ年上の男の子は、親たちにアサちゃんと呼ばれていた。
「アサは体が弱くて、お外で遊べないの。静樹くん、おばちゃんがお仕事行ってる間、アサと一緒にお部屋で遊んでくれる?」
――アサ、お兄ちゃん?
「ちょうど良いわよ。うちの子なんて、小学校に上がったのに未だに友達一人も連れて帰ってこなくて。アサちゃん、静樹にお友達の作り方教えてくれる?」
その日からアサ兄は、いつも静樹と一緒に部屋で遊んでくれた。アサ兄は体が弱いけれど性格が暗いわけでもないし、小学校でアサ兄を見かけたときは、いつもたくさんの友達に囲まれて楽しそうに笑っていた。
だから、どうしてアサ兄は自分と遊んでくれるんだろうって、気になって一度訊いてみた。
「よく入院するし。それに友達と一緒のこと出来ないの悔しいからなぁ。静樹くんも仲のいい友達出来たら、外で遊べないお兄ちゃんの相手なんかしなくていいよ?」
――やだ、ずっと一緒に遊んで欲しい!
そう言った静樹の言葉を聞いたアサ兄は綺麗に口角を上げて笑っていたけど、窓の外の夕日に照らされた目元は、少し寂しそうだった。その寂しそうな笑顔を隠すように、慌てて両手で静樹の髪をぐしゃぐしゃと撫でた。
静樹は、いつも遊んでくれる大好きなお兄ちゃんと、この先もずっと一緒にいられると思っていた。
それからアサ兄は何度も入退院を繰り返すうち、静樹の住む田舎には帰ってこなくなった。
中学に入った頃、山の麓にあったアサ兄の家が取り壊されているのを見て、静樹にとってアサ兄は「永遠に会えない初恋のお兄ちゃん」になっていた。
静樹は今でも、あの夕日に照らされたアサ兄の笑顔と細い指先を思い出すたび、自身で制御できないほどの情動に囚われてしまう。
もう一度、会いたいなぁって気持ちと、こんな気持ちを持っている自分は、会うべきじゃないって相反する気持ち。
もちろん静樹がどんなに望んだところで、アサ兄はもう「亡くなっているから」会うことは叶わない。
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