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実家
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蛍「ただいま」
母「はーい!みんなお帰りなさい!」
すっかりニコニコに戻った母さんと、同じような顔をして今にも歌い出しそうな父さん。2人とも帰るなりキッチンへ向かった。さっそくお祝いの準備に取り掛かるらしい。
蛍「何か手伝おうか?」
母「今日は蛍ちゃんが主役だからいいの!ゆっくりしてて」
父「そうだ、蛍も優も入寮の準備は済んだのか?」
蛍「あ、まだだった」
優も隣で首を振っている。
父「早く済ましておいで、明日には寮に入るんだから」
蛍「はーい」
そう。蛍は優と同じ学校に進学する事になった。ちなみに空も去年からその学校に通っていて、1年の後半から風紀委員として忙しくしているらしい。学校の名前は「榎本学園」小中高一貫の男子校で全寮制になっている。編入試験はかなり難しかったが蛍も優もほぼ満点で合格できた。そして、入寮日がいよいよ明日となっている。が、そのための引越し準備がまだ終わっていなかった。とは言っても寮の部屋に大体のものは揃っているようで、詰めるものも着替えや本、趣味のものが中心になる。2人はそれぞれの部屋に戻って荷造りをはじめた。ダンボールに着替えを詰めながら、蛍はちらっと壁の向こうにある優の部屋を見る。明日起きたら、いつもみたいに笑っててくれたら良いのになと都合のいい事を考える。いつも一緒にいる分いまが少しだけ心細く感じた。やっぱり、分からないなら本人に直接聞いた方がいいよね。そんな事を考えながら黙々と作業を続けていると必需品は詰め終わった。あとは、
蛍「パソコン、漫画とその他諸々……」
持ってきたダンボールに入り切るか心配な量。特に漫画が多い。昔から家で遊ぶことが多かった蛍がハマったのは、必然というか漫画やアニメだった。幼い自分が喜ぶのをみて両親は山のように色々買い与えてくれたのを思い出す。流石に全ては無理だったが、当時買ってもらった物もいくつか残っていて、そこから更に年数を重ねる度に数が増えていったのでそれなりに量がある。どう考えても全部は持っていけないので、厳選して持っていこうと蛍は選別を始めた。
---5分後---
蛍「えー、これも持っていきたいし。これも時々読み返したくなるんだよなぁ……」
---更に10分後---
蛍「あ!これ懐かし〜、好きなセリフあったんだけど、この辺だったかな……」
---更に更に30分後---
蛍「あ〜!面白かった!……なんでこんな散らかってんの?」
自分を中心に無造作に積まれた漫画やDVD、端に寄せられた空のダンボール。当初の目的を完全に忘れていた蛍は読み終わった漫画を手にしたまま暫く固まっていた。
空「いやいや、引越しの準備してたんでしょ?」
クスクスと笑う声のほうを見ればいつの間にか開いていた扉の前に空が立っていた。
蛍「うん、そうなんだけどね」
空「ちょっと散らかっちゃったね」
蛍「わかっててもつい読んじゃうんだよ」
空「なら、優に手伝って貰ったら?俺はこれから買い出し行かないといけなくて」
手にした財布をチラつかせる。お祝いの追加食材を頼まれたらしい。ごめんね、と軽く謝られたそれに大丈夫だよ、と返す。でも優くんか……。俺が困った顔をしていたらそれを見た空兄ちゃんも少し困った顔で笑った。
空「優はまだ拗ねてるのか、相変わらずだね」
蛍「拗ねてる?怒ってるんじゃなくて?」
空「怒っては、ないと思うよ。なんで拗ねてるかわかる?」
どうやら怒っている訳では無いようだと蛍は少し安心した。でも拗ねている理由は分からないので首を横に振る。散らかった箇所を避け部屋に入ってきた空は、床に座ったままの蛍に目線を合わせるようにしゃがみ込む。
空「うーん、俺が言うのもなぁ。本当にわかんない?」
こてん、と首を傾げて言う兄に釣られて蛍も同じように首を倒す。思い当たる節はないかと頭をひねる。
蛍「あ、」
空「お、分かった?」
蛍「同じ学校行くことギリギリまで内緒にしてたから?」
空「言ってなかったの?!」
蛍「びっくりさせようと思って……」
空「ちなみにいつ伝えたの?」
蛍「試験の前の日」
空「それであの点数かよ……いや、蛍来るって分かってたらやるかぁ」
蛍「これかなぁ、そう言えば試験の後くらいから優くん冷たいし」
空「うん、まぁ流石に前日に言われたら驚くよね。悪いことしたなぁって思ってるなら、ちゃんとごめんなさいしてきな?」
促すように蛍の頭を撫で空は部屋を後にした。
確かに、前日は急過ぎたかな。考えながら蛍も腰を上げる。部屋の扉は蛍がすぐ出ると分かっていたのか開けたままになっていた。部屋を出て数歩も歩かないうちに優の部屋の前に着く、隣の部屋なので当然だ。優の機嫌を損ねたのがこの事かわからないが、少なくとも今思えば試験前日に驚きもなにもあるか、という事には気づいたのできちんと謝ろう。扉をノックする。
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