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飲みすぎた!
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そして話は、現在へと戻る。
時はもうシンデレラも帰宅している時間帯。人の気配もなく静まり返った道路の端。カチカチと点滅する街灯に照らされている。
「.......あれ?」
なにここ、どこだ。
確か飲み会してて。あ、そうだ、タクシーに乗って、それで家の前で下ろされたんだった。
そんで、どうなったんだっけ。
あ、ゴミ袋ないから
ゴミ袋買いにコンビニ行こうとして.....
頭痛い。お酒飲むといつもこうなる。
俺弱いんかなあ......
あと、ふわふわするのに座ってるのなんだ。
ってゴミじゃん、なにこれ〜
ゴミ袋買いに行こうとして
ゴミ捨て場に座り込んでんの
どういう状況だよ〜
あ、頭痛い。考える度にズキズキが勝ってしまってなにも考えられない。うう、酒強い人いいなあ。。
みんなお家無事帰れたかな。俺馬鹿みたいにゴミ捨て場に捨てられてるの恥ずかしいからみんなには黙っておこう.......酒は飲んでも飲まれるな。だな。とほほ。
自分の情けない姿に悲しくなってくる。
「.....お兄さん大丈夫すか?」
カチカチと点滅する光が眩しくて
よく顔が見えない。
「あれ、田代くん?」
なんか聞いた事あるような声。
俺の名前を呼ぶ声がすっと頭に響いて、頭痛も和らいでいくのは何故だろう。鈴のような声、サンタさんとトナカイが奏でるリンリンリンという音のよう.......
「大丈夫?飲みすぎちゃった??」
ぼんやりと向かい合っている彼の紺色のネクタイを見つめる。スーツ.....優しいお兄さんだな.........
ってあれ。この、え、がお、、、
「..........なんでいるんすか」
「久しぶりだねえ、田代くん」
キスされたあの日から一度も会うことはなかった高岩先輩と、また偶然に会ってしまうなんて。
かきあげた髪の毛
ゆるめたネクタイ
スーツを着ている先輩
また、、、、、会えた。
何年ぶりだっけ。
俺があん時、
高校三年でいま大学二年だから、
2年ぶり.......?
やばい、ものすごく嬉しい。
「俺今日最高の1日です」
「あはは、田代くん本当にいつも変わんないね」
楽しそうに笑う先輩
手を差し伸べてくれる、
まるで、それは。
ゴミ捨て場というくらい暗い谷底から、天国へ連れて行ってくれる天使のようで…
あ、ちょっと表現あれか。うん。でもそれくらいなんていうか俺にとっては天使のような先輩。なわけで。
「わ〜ん、先輩久しぶりです!俺、会いたかったです〜」
差し伸べられた手を掴むと、体重差で支えきれなかったのか先輩もゴミ捨て場へと引き込まれてしまう。
す、スーツなのに......
ごめんなさい。先輩.......
「ぎゃああ!田代くんゴミに乗っちゃったどうしよう!!」
「先輩、夜中ですよ、静かに.....」
「こんなとこで寝てたお前に言われたくねえって、なにこれ!あはははは」
楽しそうに笑いながらツボに入ってる先輩を横にすると
こんな状況なのに楽しくなってしまうのはどうしてだろう。
「「あはははは」」
成人男性二人
ゴミ捨て場で大笑い
客観視したら目を疑いたくなる光景なのに、なんだろう。さっきまで死にたい気分だったのに、いまは心の底から笑っている。
「あはは、あー笑い疲れた。脇腹いたい」
「はは、高岩先輩、なんでこんな夜中に歩いてたんですか。俺は脇腹じゃなくて頭痛いっす」
2人してよろよろとゴミ捨て場から立ち上がる。
ゴミの匂いはついてなさそうだ.....良かった良かった。
「.........ってなんでそんな顔してんすか」
「田代くん、聞いてくれる?」
「子犬みたいな顔やめてくれますか」
「子犬って馬鹿にしてんのかあ、おりゃ」
「やめ、くすぐり、だめですって」
5分後。
ぜーはー
一体俺たちは何してるんだっけ。
2人して地面に座り込み、
息を整えていると
あ、という先輩の声が耳に入ってくる。
「そういえばさ、この公園、あれだね」
「あーもう2年前ですか?」
「うん、あの時はありがとうね」
にっこりと笑う先輩の視線を追い、
公園へと目を向ける。
この公園。
酔っ払い先輩を家まで送ろうとして家が分からず公園のベンチに座らせて途方に暮れたんだったけ。もう2年も前か.....いまじゃ、俺が反対に酔っ払いって笑えない。
「田代くんさ」
「はい」
「俺が死にたくなってる時いつも現れるんだよね」
「え?」
「変だね。君ってさ、なんなんだろうね?俺に生きろって言いにきてるの?」
「え?」
思いもよらない言葉に言葉をつまらせてしまう。先輩でも死にたくなる時あるの...か。人間だもの、ね。
「でも田代くんに会うとさ、なんていうか、ぱああってなるんだよね。」
「?」
「うーん言葉にするの難しいんだけど、もやもや霧でなにも見えないところに光が指すみたいな......」
「はあ」
「田代くんってさ!彼女いるの?」
「突然すね...あーいないですよ。」
「いないならさ」
そう、こういう瞬間は
いつも時が止まる。
「俺と付き合わない?」
......田代はフリーズしてしまう、再起動はできるのか。
深夜公園に立ち尽くす男性と
自信ありげににっこり笑っている男性
うん、どういう状況?
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