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告げれない恋 1
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この想いを自覚してから、早く十年とという月日が経っていた。自覚を持ち初めてからは、君とどう接すればいいのか分からなくなって、家族ぐるみ以外で君と話すことはなくなった。学校で出会ったとしても僕は逃げてしまう。
だって君はもう……僕からしたら雲の上の存在のようになっていた。
何度でも、消し去りたかった、叫びたくなった想いも、今は静かに僕の心の奥深くに蓋をされ、沈められている。
君にこんなことを告げたとしても……迷惑にしか、ならないから。
君に気持ち悪いなんて、思って欲しくないから。
(今日もまた、始まるのか……休みがあっという間だ)
そんなことを考えながら、結翔は見慣れた通学路を歩いていく。
高校は自宅から通える、公立を受験していた。それは密かに想いを寄せている人と被らないためだ。それに今となってはあまり話さなくなった存在でもあるが、そばにい続ければ、ボロが出てしまいそうであったからだ。
「お兄ちゃん早いよー!!! 妹をもうちょっと待ってよ!」
「あ、ごめん。素で忘れてた」
「それもっと酷いんですけど!?」
「まぁまぁ、そんなに怒るなよ。可愛らしいメイクが台無しになるぞ?」
「誰のせいでなってると思ってんのよォ!!」
そうその高校は中高一貫校である。今隣でギャーギャーっと騒いでいる二個下の妹みらんが通っている学校だ。
結翔は中学までは別の学校に通っていたが、家のことも考え、公立に移った。それなりに裕福な家庭ではあるが、そろそろそこまで行きたいと言った学校ではない。正確には “無理やり” 入学させられたが……正解かも?
本来なら、妹と同じ学校に通う予定だったんだけど……あるやつのわがままで進路が変わった。プラスでいいこともあった。それなりの学業は中学三年間でみっちりと頭に叩き込めれたところだ! それだけが今の強みだ。
まぁ、わがままを言われて、俺自身が受け入れそうだったから、受験期間だけ、両親と相手両親、学校などに手伝ってもらって、邪魔されないように工夫もした。それでもダメな時は、無理くり遠回りをして、帰ったぐらいだ。
家に駆られても母に『ごめんね。今みらんと一緒にお使い頼んでるの。ほら、壱樹くんも冷えちゃうから帰りなさい』と追い返してもらっていた。部屋の窓から見ていたのだが、良心がやられかけた。
そして現在だ。
「あれからまだ、数ヶ月しかたってないと思うと不思議だ」
「何言ってるの? あぁ、壱樹にぃのことね」
バサッと遠慮という言葉を知らないみらんに言い放たれる。名前は伏せていたのに。
「なんで、告白しなかったの?」
「だって、あいつは有名は大企業の御曹司。かといって、俺たちの家系は由緒正しきものではない」
「要するに言いたいのは……釣り合わないから “告げない” 言ってこと?」
「それもあるけど」
「あるけど?」
ズカズカと張り込んでくるみらんの言葉に結翔は観念するかのように話し出す。
「みらんは知ってるだろ、俺の身体のこと?」
「うん。聞いた時は少しビックリしたけど」
「それだよ。あいつの子を俺は産めるとしても、だ。……おじさんやおばさんのこともあるし、大企業の御曹司が同性とだぞ? 世の中【男性妊娠】っていう現状には理解もあるけど、お堅い社会じゃ、納得されないことばかりだ」
「そ、そうだとしてもよ! 告げないのは悲しすぎない」
「まぁー、それもあるけど、僕は言うつもりはないし、迷惑に思われたくない。ずーっと幼い頃から一緒にいる “幼なじみ” から突然『好きです!』なんて言われてみろ、戸惑っちゃうだけだろ。だからだよ」
「お兄ちゃん。壱樹にぃならそんなことないと思うけど、それでも……?」
みらんの質問に結翔は困ったようなでも少し悲しげな顔で「それでもだよ」と言う。
その後、二人の間で会話が繰り出されることはなく、静かなまま校門を通り越した。
(みらんの言葉も一理あるけど、もう僕は彼を嫌いなまま《好きなまま》でいたい。告げることがなくても、彼の『友人』でいたいんだよ)
結翔は下駄箱から学校指定の上靴を取りだし、下靴と履き替え、下駄箱へとしまい、朝の人だかりの多い廊下を通りながら、階段をあがり、教室へと入っていった。
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