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待ち合わせ場所に行きました。
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昨日告白されて、今日遊びに行く。
展開が早すぎるのかも普通なのかも分からない。
全て俺に友達がいないのが悪い。
しかし、放課後遊びに行くというのは助かる。私服がダサくても大丈夫。制服さすがマジリスペクト。
私服の時にファッションチェックされたらおブスの自信はある。
なんてくだらない事を延々と考えている内に、
待ち合わせ場所に到着する。
学校から数駅離れたショッピングモール。フードコートには放課後たむろする学生で溢れかえっている。俺も今後はそちら側に行くのかと覚悟を決めていた。
少し浮かれていたのかもしれない。
誰かと遊ぶなんて無かったから。放課後も休みも一人でただ黙々とゲームをしていた。こうやって誰かに誘われて待ち合わせをする機会なんて、初めてだったんだ。
ソワソワしながら待ち合わせ場所に向かっていた俺の足は、ピタリと止まってしまった。
待ち合わせ場所には佐藤晴輝。
そして数人の女子生徒。
あんな人気者、学生が集まるこんな場所で放っておかれるわけが無い。
俺は、見た光景にただただ虚しくなるだけだった。自分がいかに邪魔な存在か。
俺がいなくても、むしろ俺がいないほうがいいんじゃないかと思ってしまう。
待ち合わせ場所について5分が経つ。未だに周りの女子が離れていく気配は無い。
嬉しそうに高い声を響かせて、やたらに腕に触っている。よくもまぁ話すことがあるものだ。
でも、佐藤くんも佐藤くんだ。
俺が好きだと言う割に、5分も前から近くにいる俺には気付かない。女にしか目がいっていない。
連絡だけして帰るか、とスマホに目をやるが連絡先など交換していない事を思い出す。
後日謝れば良いし、きっとその内そこにいる子達と遊びに行くんだろう。モテる奴も苦労するんだな。俺には関係ないけど。
そうと決まれば早く帰ろう。さっきから取り巻きの目線が怖い。痛い痛い。
もう今日は嫌なことばっかりだ。楽しみになんかするんじゃなかった。帰ってゲームして風呂入って早く寝よう。やっぱり陽キャの相手はするもんじゃない。住む世界が違いすぎる。
そう決意した瞬間
「あっ、先輩!」
彼の声と同時に、視線は一気にこちらへと向けられる。その視線は俺を認識すると、侮蔑を含んだ笑みで攻撃する。
駄目だ、やばい。怖くなってきた。
あぁ、頭が痛い。
話し声さえ聞こえてくる。
「あの人誰?知り合い?」
「まさか笑。ここは空気読んで帰ってほしいよね?」
「帰ってくれたらわんちゃん佐藤誘えるくない?」
この空間で明らかな異物は俺だ。
俺なんかがここにいたら、俺のせいで、佐藤くんに迷惑がかかる。
彼があの人生で築き上げてきた人脈が、関係が、俺のせいで台無しになってしまう、
そんなもの建前で、俺が怖いだけだ。
あの視線が怖い、俺を突き刺す声が怖い、こうやって俺を排除する雰囲気が怖い。
「ちょ、ちょっと用事思い出したわ、俺帰るよ」
「ちょっ先輩!」
「ごめんごめん、女の子たちと遊びに行ってやれ、な。」
俺は走って帰路につく。早く家に帰りたい。
一人になりたい。
誰の顔も見たくない。誰の声も聞きたくない。
俺を不安にさせるだけだ。今まで通り一人で良いんだ。
涙が止まらない。止めようとすればするほどボロボロと目から溢れてくる。
こういう時のために泣けるアニメでも見て涙の止め方勉強すべきだったな。
佐藤君は今頃あの女の子達と遊びに行ったのかな。
逃げ出すような自分勝手な奴よりも、自分を必要としてくれる可愛い子の方がいいもんな。
俺は逃げるときあいつの顔すら見れなかった。
どんな表情をしてたのかも、知れなかった。
焦ってたのかも、喜んでたのかも。
もうそんなこと俺には関係ないけど。
「はぁ、俺かっこわり」
そんな独り言すら誰にも届かない。
走ってる内に知らない場所に来ていた。かっこ悪い所の騒ぎじゃない。何処まで来ていたのか携帯で時間を確認すると大分時間が経っていた。
今日は日が落ちるのも早い。段々と暗くなっていた。肌寒さすら感じる。
別にあんたの為じゃないんだから、と手編みのマフラーを渡すツンデレ幼馴染みと
今から帰るの?一緒に帰ろ!と隣を歩いてくれる可愛い妹と
どちらを攻略したいか悩みながら来た道を戻っている。つもり。
こうやってくだらない事で頭を満たさないとマイナスな思考でいっぱいになってしまう。
全部全部佐藤くんのせい。
「ねね、あのさァ」
呼ばれた気がして振り向くと、俺の最大地雷ジャンルとしているチャラい男が3人立っていた。
人生終わった。金なんか無い。財布の中には5000円と少量の小銭。
俺なんか必要ないとは言ったけどまだ死ぬには惜しい人材だと思います。このお国の為に身を呈して働かせて頂きます。国家万歳。
「あの…ちょっと今、金持ち合わせてなくて…」
「いや?別に金とかは良いんだけどさ」
金じゃないなら何が良いんだか分からない。
「ぅえ?い、一発殴らせろとか、ですかね?」
はは、口にしといてだが面白くない冗談だ。
けど一発でこの状況が終わってくれるのならそれも良いのかもしれない。
「違ぇよ、」
声に段々と苛立ちが交わってくる。
「じゃあ何だよ、、」
情けなさと恐怖でジワジワと本日2度目の涙が出てくる。助けて欲しい。
「俺、アンタと遊びたいだけなんだけど?」
「、、え、ち、ちょっとよくわからないんですが」
「本当ですよ。俺も意味がわかりません。俺が先約なので今からこの人は俺と遊びに行きます。すみませんね」
意味の分からない返しに俺が固まっていると後ろから声が聞こえる。
こんなタイミングで来るなんて、ヒーローかなんかなのか。
「佐藤君、」
「坂原先輩、大丈夫?」
「………はァ」
3人組はため息を一つ吐くと離れていった。
助けてくれてありがとう
さっきは逃げてごめん
あの女の子達どうしたの
何で来てくれたの
色々聞きたいことはあるが、何より優先で聞かなきゃいけないことがある。
「…佐藤くん、ごめんここ何処?」
「…………へ?」
この場に合わない質問に、佐藤くんは目を丸くする。
顔を上げ、辺りを見渡してもここが何処か分からずにいたのだ。
「だからここ何処…?」
「いやいや、先輩。今流れ的に
『俺のこと助けに来てくれたの?佐藤君頼もしい。お付き合い考えても良いよ!』みたいな展開じゃないんですか?」
オタクじゃないはずなのに、話す速さがオタクのそれ。
佐藤くんは真剣な眼差しでこちらの眼を真っ直ぐに見つめている。
「付き合うとかは思わなかった。
けどちょっとかっこよかったよ。それはありがとう」
「先輩…!」
「で、ここ何処だよ」
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